2024年12月12日(木)

その英会話本、試してみました

2014年1月9日

 と、ここまで書くと、あまり信頼できないと思われるかもしれない。ところが、中学、高校時代にはかなり勉強したので、いわゆる受験英語は偏差値でいえば75ぐらいのできの良さだったと思う。それがどの程度の水準なのかは忘れてしまったけど。ただ、話したり、書いたり、聞いたりは大の苦手だ。そもそも、インターネットがなかった中学、高校時代の私には、生の英語を耳にする機会はNHKラジオの英会話学習番組「基礎英語」くらいしかなかった。

「これさえ読めばすぐに話せる」は期待過剰

 というわけで、いよいよ本題に入る。記念すべき連載第1回に取り上げるのは『一億人の英文法』だ。まず、結論から言おう。感動した。名著である。「話すための文法書」というコンセプトも斬新だ。

 受験勉強で頭に詰め込んだ英語の構文の無味乾燥な決まり事について、「なるほど、そういうことだったのか」と、感覚的に無理なく納得できる説明が随所にあふれている。例えば、学校で形だけ頭に入れていた「too ~ to ….」(~すぎて・・・できない)という構文。わたしは昔から、否定の「not」が入っていないのに、なぜ「できない」となるのか疑問に思っていた。この本で初めて、その理由が分かりうれしくなった。

 そう、ネイティブはどういう意識や感覚で、その単語や構文を使うのかという視点で解説されている。ネイティブが英語を話すときのフィーリングや、そのニュアンスがよく分かる。さらに、言葉のイメージをつかめるようイラストをたくさん掲載している。

 しかし、である。残念ながら、これさえ読めばすぐに話せるようになる、と思って本書を読むと期待はずれに終わるかもしれない。そこはあくまでも文法書であり、英文を形作るシステムという基礎は身についても、自分の口を動かして実際に話すという能力をつけるのは、別途、訓練が必要だと思われる。ビジネスシーンで使えるフレーズが載っているわけでもない。そう漢方薬のような本と言っていい。

 実際、わたしも英語の仕組みがこれまでより数段よく理解できるようになったと思うが、本書を読了したいま、会話力が上がったかという、そういう実感はない。日ごろから本書を繰り返し読みつつ、やはり実際に英語で話す練習を続けなければいけないと思う。もちろん、だからといって、本書の価値が下がるわけではない。レベルの高い英会話力を身につけたい方にはぜひお薦めしたい。


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