‘Do you like sushi?’
‘Yes, I do !’
埼玉県蓮田市のある小学校。5年生のクラスから聞こえてきた、担任の先生の質問に元気に答える子どもたちの声。英語の授業である。
アルファベットソングを歌ったり、上記のような基本的な表現を、踊りながら練習する。英語に慣れ親しむには、一見良さそうなアクティビティだが、中にはまったく踊らない子、隣の子とふざけ合う子など、1列に1人ぐらいは見受けられる。
授業の中盤では、その日ごとに変わる活動のメインテーマの単語を覚える。この日は「衣服」に関するワードだ。
担任の先生が黒板に貼ったカードを指しながら発音の見本を示す。‘jacket, skirt, ブラウザー…’
‘ブレイザー(blazer)!’
担任の先生が、blazerの発音を間違えた。そこですかさず正しい発音を提示したのが、サポーターと呼ばれる、英語に堪能な日本人である。
サポーターに指摘され、担任の先生もすぐに発音を正す。しかし、生徒は混乱気味だ。「ブラウザー」「ブレザー」と声が飛び交う。
‘Let’s play game!’
授業の最後には、テーマの単語を使用したゲームを行う。この日は、色と衣服の組み合わせを使ったフルーツバスケットだった。
鬼がBlue skirt!と言えば、青いスカートを着ている子が席を移動する。席は人数より1つ少なくなっているので、座れなかった子が次の鬼。しかし、英語の授業は極力日本語を使わないというスタンスのため、英語でのルールの説明を生徒はほとんど理解できないまま、ゲームはスタート。みんな周りをキョロキョロ見回し、訳が分からず困っている。
ある男の子が鬼になった。何を言ったらいいのか分からないのか、それとも恥ずかしいのか、とにかく今にも泣き出しそうだ。
ゲームの時間は約15分。生徒たちのボキャブラリーが尽きるには十分すぎる時間だ。どうなるかというと、終盤、鬼が言うことはずっとblack T-shirts!の連続となる。日本語ならもちろんいくらでも応用は利くが、英語ではこれが限界のようだ。
ゲームに飽きてきたやんちゃな男の子たちがふざけ出す。騒がしくなり鬼の声が聞こえなくなる。こうなるとゲームはもう成り立たない。