2024年9月4日(水)

BBC News

2024年9月4日

アンドリュー・ハーディング・パリ特派員(ブローニュ・シュル・メール)、ジョージ・ライト、BBCニュース

英仏海峡で3日、フランスからイギリスへ渡ろうとした移民が乗ったボートが沈没し、子供6人と妊婦1人を含む12人が死亡した。英仏海峡での移民の海難事故としては今年最悪とされる。

地元検察当局によると、死者のうち10人が女性、2人が男性だった。

ボートはフランス北部ブローニュ・シュル・メールに近いグリ・ネ岬沖で沈んだ。現場海域では50人以上が救助されたと、仏沿岸警備隊は報告している。

2人が重体だという。

当局によると、ボートは定員を超過し、底が「裂けた」状態だった。ライフジャケットを着用していたのは8人未満だったという。

情報筋の1人は、シリア人密入国業者が渡航に関与している可能性を示唆した。

地元検察官のギレック・ル・ブラス氏は、犠牲者は「主にエリトリア人」だと当局は考えているが、「正確な国籍はまだ特定できていない」と述べた。

国連の国際移住機関(IOM)によると、2024年に入ってからすでに30人が、英仏海峡を渡ろうとして死亡している。これは、45人が死亡した2021年以来の高水準となっている。

英仏や欧州の移民対策は

フランスのジェラルド・ダルマナン内相は、仏当局は小型ボートで出航しようとする移民の6割を阻止していると述べた。

密入国業者は定員30~40人の船に最大70人を押し込むことが多く、これがより致命的な難破事故を引き起こしている。

ダルマナン内相は、イギリスと欧州連合(EU)に対し、小型ボートによる密入国を抑制するための「移民条約」に合意するよう求めた。

イギリスのイヴェット・クーパー内相は、「ぞっとするような、ひどく悲劇的な」事案だと述べた。

「この恐ろしく、冷酷な人命取引の背後にいる集団は、航海に適していないゴムボートにますます多くの人を押し込み、非常に悪天候であっても海峡に送り出している」

「こうした危険で犯罪的な密入国業者集団を解体し、国境警備を強化する」ための努力は「極めて重要であり、迅速に進めなければならない」と、クーパー内相は付け加えた。

フランス北部カレーで移民支援を目的に設立された慈善団体「Care4Calais」のスティーヴ・スミス代表は、「このような悲劇はさらに頻発している」と述べた。

「この海峡の両岸にいるすべての政治指導者は、『このような回避可能な悲劇を終わらせるまでに、どれだけの人命が失われることになるのか』を問われるべきだ」

仏沿岸警備隊によると、3日の救助活動にはヘリコプターや海軍のボート、漁船が加わったという。

イギリスに渡ろうとする移民が増加

小型ボートで英仏海峡を渡るという危険な行動を取る人の数は増加傾向にある。2018年以降、13万5000人以上がこのルートでイギリスに到着している。

今年に入ってからは、2万1000人以上が英仏海峡を横断している。これは前年同期より多いが、2022年よりは少ない。2022年にイギリスに到着した人数は4万5755人と、2018年の統計開始以来、最多だった。

イギリスの現在の労働党政権も、前の保守党政権も、この問題への対処を誓っていた。

前政権下の2022年には、不法入国者をアフリカ・ルワンダに移送する計画が初めて発表されたが、これが実行されることはなかった。キア・スターマー氏は首相就任後にこの計画を廃止した

スターマー首相は密入国業者集団を「粉砕する」ためのより厳しい措置を取ると約束している。

英首相官邸は、国家犯罪対策庁(NCA)の人員を増やし、政府の国境警備司令部を発足するなど、すでに犯罪組織を標的にした対応を取っているとしている。

しかし、政府は亡命希望者に安全なルートを提供するためにもっと努力すべきだとの批判の声も上がっている。

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは3日、「『(密入国業者)組織を粉砕する』といって、いくら取り締まりを行ったり政府のレトリックを展開したりしても、こうした組織に搾取される人々のニーズが対処されないままでは、このような惨事が何度も繰り返されるのを止めることなどできない」と述べた。

(英語記事 Twelve die after migrant boat sinks in Channel

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cgm7dx9n2ylo


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