2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年9月10日

 ウクライナはこれまでも滑空爆弾を搭載したロシア機を撃墜しているが、そのためには防空システムを最前線近くに移動させることで、希少な防空システムを危険にさらす必要がある。ウクライナによるドローン攻撃の件数と範囲が拡大しているが、これは使用許可を求めている長距離ミサイルの代替になるものではない。

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ウクライナにとって不可欠の武器であるドローン

 ウクライナ戦争は多くの貴重な教訓を与えてくれているが、その中に現代戦の最も顕著な特徴の一つとして、ドローンが極めて重要な役割を果たしていること、およびそれが今日の戦闘のありようを大きく変えている、ということがある。

 今日の地上戦は、情報収集、偵察・監視、標的の特定、精密攻撃、敵攻撃の阻止等々、ドローンは実に様々な目的に使用され、しかも入手が容易で低コスト、配備と使用も容易である。ドローンはまた、ウクライナのように軍事的に非対称な戦いを強いられる側にとっては不可欠の武器となる。

 とは言えドローンも万能ではなく、他の兵器との適切な組み合わせによって初めて戦闘を有利に展開することができる。その意味で、今のウクライナに欠けているのが長距離ミサイルであり、それが米国に対しATACMSの使用制限解除の強い要請に繋がっている。

 ウクライナは早くからドローンの重要性に着目して自国生産に力を入れ、西側から提供される武器を補完してきた。2022年12月には既にロシアとの国境から600キロメートル(km)以上離れたエンゲルス空軍基地を含むロシア領内の空軍基地攻撃にドローンを使用し、その後もロシア領内軍事施設等に攻撃をしかけてきた。

 特に効果的であったのは海上ドローンによる黒海艦隊に対する攻撃で、そのため同艦隊は事実上セヴァストポリの母港を放棄し、ウクライナはロシアによる海上封鎖を破って穀物等の海上輸出の再開を可能にしている。

 本年2月6日、ゼレンスキー大統領はこのようなドローンの果たす重要な役割に鑑み、「無人システム」を担当する独立の「無人システム軍(Unmanned System Forces)」を、陸海空軍等に追加される新たな軍種として創設する旨の大統領令に署名している。


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