2024年9月7日(土)

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2024年9月7日

パリ・パラリンピックは競技9日目の6日も、日本勢のメダル獲得が相次いだ。車いすテニス男女、柔道男女、競泳男子で、金を含む複数のメダルを手にした。陸上男子でも銅メダルを勝ち取った。

上地が2日連続の金、小田凱人・三木拓也ペアは銀

車いすテニス女子シングルスでは、上地結衣が大会出場4回目で初の金メダルを獲得した。この種目で日本選手が金メダルを取ったのは初めて。上地は前日のダブルスでも優勝しており、今大会2個目の金メダルを手にした。

決勝の相手は、前日のダブルスでも対戦した第1シードのオランダのディーデ・デ・フロート。東京大会の金メダリストで、この種目でのオランダ勢の9連覇を狙った。第2シードの上地はこれまで何度も対戦し、大きく負け越してきた。

第1セット、上地は4-1のリードから逆転され4-6で落とした。第2セットはブレイク合戦となり、上地が4-3からキープに成功して6-3で奪取。セットカウント1-1とした。

最終第3セットは上地が3-1とリードしたが、追いつかれ3-3に。しかし上地は集中力を切らさず、デ・フロートの強力なストロークを粘り強く返球し、絶妙なドロップショットや鍛えてきたバックハンドで得点を積み重ねた。最後はデ・フロートがサーブをダブルフォルトし、上地が6-4でこのセットを取って優勝を決めた。

上地は試合後のインタビューで、「ファーストセットを取られて厳しい時間も長かったんですけれども、コートサイドで見守ってくれているチームの皆さん、たくさん応援に来て下さっている方々の後押し、声援があって、あきらめずに最後まで戦うことができたと思いますし、あきらめなかったからこそ、チャンスが来て、それをしっかりものにすることができたと思います」と涙ながらに話した。

自身の公式サイトによると、上地は先天性の潜在性二分脊椎症で、11歳で車いすテニスを始めた。パラリンピックには高校3年生だった2012年ロンドン大会から出場し、2016年リオデジャネイロ大会で銅メダル(シングルス)、東京大会では銀メダル(同)銅メダル(ダブルス)を獲得した。

今大会のシングルスの銅メダルは、オランダのアニク・ファン・クートが勝ち取った。

車いすテニスは男子ダブルスでも決勝があり、小田凱人(ときと)・三木拓也ペアが銀メダルを獲得した。

第2シードの日本ペアは、第1シードのイギリスのアルフィー・ヒューエットとゴードン・リードのペアと対戦。相手の強力なサーブとストロークに押され、2-6、1-6のストレートで敗れた。

それでも、初出場の小田と4大会連続出場の三木は、この日の決勝までダブルス3試合を勝ち抜き、共に初めてのメダルを手にした。

試合後のインタビューで小田は、「スコアよりもいい戦いをしていたと思いますし、この舞台でこうして彼らと戦えたことを誇りに思う。今回は金を逃しましたけど、次は絶対に取りたいなといま思っています」と話した。

三木は、「金メダルを取りに来たので正直、それに値するプレーができなかったのはすごく悔しいですけど、小田選手と1年こうやって金を取るためにがんばってきたことで自分も成長できたと思う」と述べた。

パラサポWEBによると、現在18歳の小田は9歳のときに骨肉腫を発症。入院中、国枝慎吾さんがプレーする映像を見て車いすテニスを始めた。15歳でプロ転向を表明し、16歳でグランドスラム(4大大会)初出場。昨年の全仏オープンを史上最年少の17歳で制し、世界ランキング1位に史上最年少で到達した。

所属するトヨタ自動車のサイトによると、35歳の三木は高校生のときに膝関節に骨肉腫を発症し、人工関節に。大好きなテニスができなくなり絶望したが、闘病中に国枝さんの動画を見て諦めなくてよいと希望をもち、車いすテニスに打ち込んできた。

銅メダルはスペインのダニエル・カベルサスチとマルティン・デ・ラ・プエンテのペアが手にした。

柔道で廣瀬順子と瀬戸勇次郎が金、小川和紗が銅

柔道女子57キロ級(弱視)では、廣瀬順子が金メダルを獲得した。柔道女子で日本選手が金メダルを取ったのは初めて。

廣瀬は3大会連続出場で、2016年リオデジャネイロ大会の銅メダルに次ぐ2個目のメダル獲得となった。

決勝はウズベキスタンのクムシュホン・ホジャエワと対戦。双方が技でポイントを奪えない緊迫した時間が続いたが、開始2分24秒で廣瀬が体落としを決め、一本勝ちした。

所属するSMBC日興証券のサイトによると、廣瀬は小学5年で柔道を始め、高校時代にインターハイに出場。大学1年のときに膠原病を発症し、両目の視力をほぼ失った。視覚障害者柔道で復帰し、リオ大会には夫で視覚障害者柔道の廣瀬悠さんとそろって出場を果たした。東京大会では5位だった。

廣瀬はNHKで放送された表彰式後のインタビューで、「悠さんがいなかったら練習をがんばれなかったので、すごく感謝しています」と話した。

銅メダルはカザフスタンのダヤナ・フェドソワと、スペインのマルタ・アルセ・パイノが勝ち取った。

柔道は男子73キロ級(弱視)でも、瀬戸勇次郎が金メダルを獲得した。

瀬戸は初出場だった東京大会の66キロ級で銅メダルを取っており、2大会連続のメダル獲得となった。

この日の決勝はジョージアのギオルギ・カルダニと対戦。瀬戸は開始6秒に背負い投げ、45秒にも出足払いでそれぞれ技ありを奪い、合わせ技一本で勝って優勝を決めた。

瀬戸はNHKで放送された表彰式後のインタビューで、「これ(金メダル)を目指してやってきたので、本当によかったです」と話した。

日本視覚障害者柔道連盟のサイトによると、瀬戸は4歳で柔道を始めた。先天性の視覚障害で弱視だったが、一般の生徒らと部活に打ち込み、高校3年のときに視覚障害者柔道に転向した。

銅メダルはウズベキスタンのウチクン・クランバエフと、リトアニアのオスバルダス・バレイキスが手にした。

柔道はさらに、女子70キロ級(弱視)でも、小川和紗が銅メダルを勝ち取った。

小川は3位決定戦でブラジルのケリー・ヴィクトリオを相手に、開始1分過ぎに消極的だとして指導のペナルティーを受けた。しかし、開始2分20秒過ぎに背負い投げで技ありを奪うと、3分50秒過ぎにも内また返しで再び技ありを取り、合わせ技一本で勝利した。

小川は東京大会に続き、2大会連続での銅メダルを獲得となった。

パラサポWEBによると、小川は先天性の視神経膠腫のため弱視で、柔道は中学に入って始めた。視力が徐々に低下し、高校2年で盲学校に転入。一時は柔道から離れたが、教師から視覚障害者柔道を勧められ再開した。

金メダルはブラジルのアラナ・マルチンス・マウドナド、銀メダルは中国の王月が、それぞれ獲得した。もう一つの銅メダルはジョージアのイナ・カルダニが手にした

競泳バタフライで木村敬一が2連覇、富田宇宙も銅

競泳男子100メートルバタフライ(視覚障害S11)では、木村敬一が金メダル、富田宇宙が銅メダルを獲得した。

木村は東京大会から2連続でこの種目を制覇。今大会は50メートル自由形でも優勝しており、2個目の金メダルとなった。パラリンピック5大会で獲得したメダルは通算10個に増えた。

富田も東京大会のこの種目で銀メダルを獲得しており、2大会連続でメダルを手にした。

決勝では木村が序盤からレースを引っ張り、50メートルをトップで折り返した。富田も2番手で続いた。

後半も木村は力強い泳ぎでリードを広げ、1分0秒90のパラリンピック新記録で1位でフィニッシュ。富田も順位を一つ落としたものの、1分3秒89で3位に入った。ウクライナのダニロ・チュファロフが2位に食い込み、銀メダルを獲得した。

レース後のインタビューで木村は、「バタフライでベストを出すためにいろんな取り組みをしてきて、こういうかたちで終われるというのは最高ですし、出来すぎだなと思うくらいです」と話した。今大会の金メダルが2個になったことについては、「取れてしまったのがこの間でしたけど、(この日は)取りに行ったので、こちらの方がだいぶうれしいです」と述べた。

富田は「バタフライ、なかなか調子が上がらなくて、正直かなり厳しいなと思いながらすごい不安で、コーチが『これまで負けない練習してきたから自信をもって行きなさい』と強く言ってくれて、なんとか試合に向かえた。タイムは全然よくなかったんですけど、木村君と表彰台に上がれるので、頑張ってきた成果かなと思って、感謝したいと思います」と話した。

所属する東京ガスのウェブサイトによると、木村は2歳の時に病気で視力を失い、小学4年生のときに水泳を始めた。2012年ロンドン大会で銀と銅1個ずつ、2016年リオデジャネイロ大会では銀と銅2個ずつメダルを獲得。2018年から単身アメリカに拠点を移し、東京大会では悲願の金メダルを含む2個のメダルを勝ち取った。

自身のサイトによると、富田は16歳のときに難病の網膜色素変性症が判明し、大学と社会人生活にかけて徐々に視力を失った。東京でのパラリンピック開催が決まったのをきっかけに競泳を始め、2015年に強化選手に選ばれると会社を辞め、競技に専念してきた。

競泳は男子100メートルバタフライの前にあった男子50メートル自由形(運動機能障害S4)でも、鈴木孝幸が銀メダルを勝ち取った。

6大会連続出場の鈴木は今大会、50メートル平泳ぎ(SB3)で金メダル100メートル自由形(S4)で銀メダル200メートル自由形(S4)で銅メダルを手にしており、4個目のメダル獲得となった。パラリンピック通算では14個目。

決勝で鈴木は、終盤の2番手争いを制し、準優勝した。タイムは36秒85でアジア記録を更新した。

50メートル自由形での銀メダル獲得は、東京大会から2大会連続となった。東京大会では出場した5種目すべてでメダルを獲得した

レース後のインタビューで鈴木は、「個人としては大満足の大会になりました。最初から最後までいい調子を維持できて、それがタイムにも表れて、個人種目では結果もついてきて、大変満足です」と話した。

パリ・パラリンピック公式サイトによると、鈴木は生まれつき両手両足に欠損があり、15歳から本格的に競泳の大会に出場。パラリンピックには、高校3年生だった2004年のアテネ大会で初出場し、200メートルメドレーリレーで銀メダルを獲得した。以来、すべてのパラリンピックに出場している。

金メダルは35秒61の世界新記録を出したカナダのセバスチャン・マサビーが獲得。銅メダルはイスラエルのアミ・オマル・ダダオンが手にした。

陸上の佐藤友祈が今大会2個目のメダル

陸上男子100メートル(車いすT52)では、佐藤友祈が銅メダルを獲得した。佐藤は今大会、400メートルでも銀メダルを取っており、2個目のメダルとなった。

決勝で佐藤は、中盤から順位を上げ、17秒44のタイムで3位に入った。3大会連続でメダルを手にしている佐藤だが、100メートルでのメダル獲得は初めて。

インタビューで佐藤は、「また追いかける側の立場に戻れたということは、非常に幸せだなということを実感しながら、これから4年間競技できるというところに幸せを感じて走っていきたいなと思います」と話した。

所属するモリサワなどによると、佐藤は2010年に21歳で脊髄炎を発症し、下半身などにまひが残った。2年後のロンドン・パラリンピックで活躍する車いすアスリートの姿を偶然テレビで見て、心を動かされ、パラ陸上を始めたという。

金メダルはベルギーのマクシム・カラバン、銀メダルはイギリスのマーカス・ペリノー・デイリーが勝ち取った。

(英語関連記事 Paris Paralympics 2024 medal results

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cjw35l0gz30o


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