戦後1世代でいったん消えた
米国も中韓両国も今後、日本の首相の靖国参拝は、米大統領のアーリントン国立墓地訪問と同じく当然のこととして定期的に行われると観念しなければならない。
戦争の記憶というのは通常戦後1世代がたてば忘れ去られる。
ワーテルロー後のレアクシオンの時代には、ナポレオンは下賎(げせん)な暴虐な男として貶(おとし)められ、当時のゴヤの絵画はフランス軍の残虐さを描写してあますところない。
セントヘレナに流された戦犯ナポレオンがアンバリッド(廃兵院)に祭られたのは、1世代たった1840年である。ユゴーの『レミゼラブル』には、共和主義者だったマリユス青年が過去の歴史に目覚めてボナパルティストになる逸話もある。
実は日本も戦後1世代を経た1970年代の10年間、靖国問題は存在しなかった。その後、歴史問題が国際的に騒がしくなったとき、私は常に、外国の学者、ジャーナリストに一つの質問をした。
「皆さんは、日本は戦争の過去の問題をいまだに解決していないとおっしゃいますが、では1980年という1年間を取ってみて、皆さんの中で一人でも一言でも、日本はまだ戦争の過去を清算していないということを言ったり書いたりしたことのある人があれば、その証拠をお見せください」
これに対しては今に至るまでただの一人も証拠を示し得ない。それが歴史の真実だからである。
左翼反米勢力の輸出が発端
いわゆる歴史問題が復活するのは80年代になってからである。当初は、すべて日本内の左翼反米勢力から外国に輸出されたものである。それは中曽根康弘首相靖国訪問阻止のための朝日新聞のキャンペーン、日本社会党の対中働きかけを見れば明々白々である。