2024年10月5日(土)

新幹線を支える匠たち

2024年9月23日

ワゴン販売が終了して増えたこと
もっと親しまれる存在に

 「笑顔でワゴン販売をしていたパーサーが、駅のホームではきりっとした表情で颯爽と歩いている。そのギャップが素敵で、私もやりたいと思いました」

優雅、親しみ、信頼という3つの心得を掲げる同社。藤田さんは特に「親しみ」を大事にしていると笑顔で話してくれた

 17年に入社した藤田有紀さん(31歳)が入社の動機を語る。しかし、そのワゴン販売は昨年10月に終了した。「ワゴン販売をしたくて入社したので終了は寂しかった」と思いを率直に語る。乗客が喜ぶ顔を見ることがやりがいでもある。「ワゴン販売はいつ来るのか」と尋ねる乗客もいて、当初は苦しい思いをしたという。

 だが、ワゴン販売がなくなった一方で、車内を巡回する時間が増えた。「以前は時間がなくて一人ひとりのお客様にサービスしたいと思ってもできることが限られていましたが、今は会話をする余裕も増えました。車窓から見える富士山をバックに写真をお撮りすることもあったりと、接客の質は上がったと思います」。

 藤田さんのこだわりは笑顔である。「この乗務員さんになら声をかけてみようかな」と思われる雰囲気作りに人一倍気をつけている。

 ある日のこと。年配のお客様の困りごとに対応した後、「飛行機にはキャビンアテンダントがいるイメージがあるけど、新幹線にも素敵な乗務員さんがいるのね」と言われ、それは確信に変わったという。新幹線パーサーも列車の大幅遅延や車内での異常時には車掌やほかのクルーと協力しあって的確に行動する。そのための訓練も欠かさない。「より親しまれる存在になれるように、ブランド力を高めていきたい」。

 藤田さんの次の目標ができた。

旅と暮らしに「ときめきのひととき」を提供する。彼ら4人の根幹には、その信念がある
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Wedge 2024年10月号より
孤独・孤立社会の果て 誰もが当事者になる時代
孤独・孤立社会の果て 誰もが当事者になる時代

孤独・孤立は誰が対処すべき問題なのか。 内閣府の定義によれば、「孤独」とはひとりぼっちと感じる精神的な状態や寂しい感情を指す主観的な概念であり、「孤立」とは社会とのつながりや助けが少ない状態を指す客観的な概念である。孤独と孤立は密接に関連しており、どちらも心身の健康に悪影響を及ぼす可能性がある。 政府は2021年、「孤独・孤立対策担当大臣」を新設し、この問題に対する社会全体での支援の必要性を説いている。ただ、当事者やその家族などが置かれた状況は多岐にわたる。感じ方や捉え方も人によって異なり、孤独・孤立の問題に対して、国として対処するには限界がある。 戦後日本は、高度経済成長期から現在に至るまで、「個人の自由」が大きく尊重され、人々は自由を享受する一方、社会的なつながりを捨てることを選択してきた。その副作用として発露した孤独・孤立の問題は、自ら選んだ行為の結果であり、当事者の責任で解決すべき問題であると考える人もいるかもしれない。 だが、取材を通じて小誌取材班が感じたことは、当事者だけの責任と決めつけてはならないということだ――

 


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