筆者は日頃から自転車の大会によく参加しているのだが、自転車に詳しくない知人にそのことを話すとたいてい「大会なんてすごい」と誤解される。ツール・ド・フランスのような大会で、プロがタイムを競い合ってサポートカーが水を渡し、ゴールでガッツポーズをする光景が思い浮かぶのだろう。
筆者が参加しているのは市民参加型で基本的に完走を目指す大会だ。それらは大会だが、レースではない。では、日本で行われているレースはどうなのだろう。連載の初回となる今回は、今年初めて開催された「ツール・ド・九州」を通して、自転車レースの経済効果という問題を考えたい。
初開催でも高い熱気
はっきりいって現地に行くまで少しナメていた。ツール・ド・九州が初開催。そんなニュースを目にしていたが、そこまでの盛り上がりはないだろう、とみていたからだ。
これもはっきりいえば、九州はサイクルスポーツの後進地だから。沖縄(ツール・ド・おきなわ)を除いてちゃんとした大会がない。自転車人口はいるのだろうが、県ごとの連携も弱い。国土交通省が指定するナショナルサイクルルート(NCR)にも選ばれていない。今年は残念なことに40年間続いていた全国的に有名な市民参加の大会「ツール・ド・国東」(大分県)も運営の担い手不足で終了に追い込まれた。
ところが、ツール・ド・九州はかなりガチに頑張っているレースだった。初日の小倉城クリテリウム(小周回の街中のレース)、二日目の福岡ステージでは小倉から大牟田まで、二日目の阿蘇熊本ステージは阿蘇山を制覇する山岳コース、三日目の大分ステージは大分のオートポリスから日田市をゴールとするコース。
筆者は二日目の福岡ステージを福岡県みやま市で観戦したのだが、同市が「チームブリヂストンサイクリング」の児島直樹選手の出身地とあって沿道を埋めた人々、選手たちを追いかけるヘリ、なかなかの熱気であった。これはもしかして成功か、とも思ったが、そう断定するには早い。まずは検証を進めてみたい。