2024年12月10日(火)

日本〝サイクル社会〟の現在地

2023年11月1日

 基本的に、観光振興、とりわけインバウンドとサイクリングは相性がいい。ヨーロッパや台湾では「自転車と観光」の結びつきが強い。

 筆者も観光に行く先で自転車に乗りたくなるクチだが、街や景色を楽しむには車や徒歩より自転車の速度がちょうどいい。自分の足で動くことへの充実感もある。コストも安いし、健康にもいい。

 ただ、日本人のファンを呼べないイベントに外国人が大挙して来ることもないだろう。まずは日本人が楽しめるサイクリングイベントとして確立されるべきである。

 今回の課題は「祭り」感覚の不足だと感じた。人気自転車漫画『弱虫ペダル』(少年チャンピオンコミックス)の作者渡辺航さんのトークショーを九州新幹線新大牟田駅前で見たが、場所自体にあまり人通りがないところなので、かなりお寒い感じだった。渡辺さんのようなインフルエンサーを呼ぶ以上、もっと生かす仕掛けが欲しい。

『弱虫ペダル』作者渡辺航さんのトークショー。盛り上がりに欠けたことは否めない

関連イベント、広域性への意識を

大会参加者をはじめ、いかに経済効果を高めるかが課題だ

 一般の人たちが自転車に乗って「ツール・ド・九州」の一部に参加できるような仕組みも作ってほしい。そのなかでは、民間の有志によって開催期間中に有明海を一周する「アリイチ2023」が初めて開催されたことは明るい動きだ。

 実は筆者はそのアリイチに参加し、150キロメートルを完走した。今回は、アリイチとツール・ド・九州とのリンケージはなかったが、どちらのイベントも来年以降も開催される予定である。アリイチを含めて、レースの関連イベントとして市民・外国人が楽しめる部分を手厚くすることで、観戦のために現地に何泊もする宿泊者を生み、経済効果も高まるだろう。

 筆者の場合、観戦とライドで2泊し、飛行機代や食事代を含めて、合計で15万円ぐらいは消費したはずである。仮に観戦だけなら日帰りでもOKだと考えたかもしれない。今日は観戦、明日はライド、最終日は自由に観光、というような旅行日程を組むことができれば、消費効果も満足度も高いものになったのではないだろうか。大会は「九州」という広域性が売りであるので、広域性を生かした多様性をアピールしてほしい。

 国内のレースで最も「祭り」の感覚に近い宇都宮の「餃子を食べて、自転車を見る」ということが可能になるように、九州各地のラーメンや美食を食べ歩きながら、福岡、熊本、大分の三県をツアーで動けるプランがあれば、飛びつきたくなる日本内外の客も増えるのではないか。

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