2024年12月20日(金)

教養としての中東情勢

2024年10月3日

 もう1つのシナリオはより大規模な反撃だ。イランの今回の攻撃は前回と比べてすべて威力の大きい弾道ミサイルによるもので、イスラエル国内ではこの際、長年の懸案である核施設や石油施設を標的にすべきだとの意見も高まっている。イスラエルのベネット前首相は「タコの触手(ヒズボラ)は著しく損傷した。今やそのアタマを切り取る時だ」と述べている。

重大な関心を示すサウジ

 バイデン政権は公式には「イスラエルの自衛権を支持する」として反撃にも賛同の構えで、地中海の米駆逐艦がイランからの弾道ミサイルを撃墜、支援したとしている。だが、ネタニヤフ首相はバイデン大統領が示したヒズボラとの21日間の停戦提案を事実上無視して戦線を拡大したことに苦り切っている。

 米紙によると、反撃については核施設への攻撃を自制するようネタニヤフ政権に強く求めている。最も警戒しているのが「なし崩し的に戦争の当事者になってしまう」ことだ。イスラエルにとっては、単独ではイランと全面戦争を戦うことが難しく、米国との共同作戦が必要になる。

 ネタニヤフ首相が自衛権を掲げてイランへの大々的な反撃に踏み切れば、民主党のバイデン大統領やその後継候補のハリス副大統領ばかりではなく、共和党のトランプ前大統領も支持せざるを得ない。首相にとっては、嫌がる米国を引きずり込むまたとない好機となる。

 イランによるイスラエル攻撃で、世界の石油・株式市場は動揺、日経平均株価も大きく値下がりした。今回の成り行きを最も注視しているのがサウジアラビアなどのペルシャ湾岸諸国だ。戦争になれば、戦火が同湾周辺に飛び火しかねない。

 サウジ実力者であるムハンマド皇太子はイランが核兵器を持てば、自らも保有すると表明しており、イスラエルがイランの核施設の攻撃に踏み切るのかに重大な関心を寄せている。

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