2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年10月29日

 ところが、一つは10年代以降、北極圏におけるロシアの天然ガス・石油開発に中国が投資し関与を強めてきたこと、もう一つは14年のロシアによるクリミア併合以降、特に今回のウクライナ侵略による西側諸国との緊張の高まりによって、ロシアは北極圏への中国の関与を受け入れざるを得ない状況になった。23年3月の習近平主席の訪露では、中露首脳の共同声明に、「北極海航路発展のための共同作業体を設立する用意がある」と記述された。

 中国にとって北極圏への進出は、「氷上のシルクロード」と称し戦略構想の中に明確に位置づけられている。中国にとっての北極海は、天然資源開発への関与、さらには宇宙との関係で極軌道衛星とのシグナルの送受信のための地上局設置等において、極めて重要な役割を果たすものである。本件記事にある「黄河と呼ばれる研究施設」等はその一例である。

食指を動かすインド

 このように北極における中露間の協力は首脳レベルの合意に基づいて着実に進められているが、最近の動きとして興味深いのは、インドが北極圏や北極海航路へのアクセスに強い関心を示してきていることである。ロシアはこれを国際的孤立からの脱却という観点のみならず、中国への牽制という観点でも歓迎しているとみられる。

 インドはチェンナイ港とウラジオストック港を結ぶ海上回廊の構築に力を入れており、19年のモディ首相訪露の際に印露間で意図表明文書が署名されている。当時の同文書は両港間の海上回廊に限定されていたが、本年7月のモディ首相訪露の際の共同声明には当該海上回廊の構築に続けて「北極海航路を通じた露印協力の発展において協力する」との一文が加えられ、さらに当該目的のため、中露間の合意と同じ「共同作業体」を設置する用意があることが表明されている。

 今後の北極圏の開発・利用については西側対中露という対立軸のみならず、露中印3カ国間のパワーバランスという観点を含め見ていくことが

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