2024年12月23日(月)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年1月31日

 戦争準備態勢が中央指導部の指示だとすると、中国指導部が日本との軍事衝突を現実的危機として認めたことを意味する。2013年6月頃から習近平主席が口にしていると「日本を相手にしない」の意味は「口喧嘩」のことで、実力行使は別ということだ。或いは、強硬派の圧力を抑えきれずに戦争準備態勢を指示したのであれば、人民解放軍は中央を押し切って軍事力を行使し得ることを意味する。11月に北京で開かれた国際会議では、中国側出席者の中に、日中の危機管理体制構築の必要性を訴える者たちもいた。しかし、1月に再び会った際には、「米中で地域の安全保障環境を調整するしかない」と、日中の危機管理体制構築は絶望的だとの見方を示した。中国側の勝手な理解であるとは言え、軍事的緊張が高まりつつある一方で、危機管理の機会が失われていく。

 2014年1月に中国政府のある部署がコンピュータ・シミュレーションを行っている。政治、外交、軍事、内政、経済、社会の様々な要素を数値化して、日中間で軍事衝突が生起する確率を計算するものだった。大量のデータを用いたため、結果が出るまでに数日を要したが、その結果は、小規模の軍事衝突の可能性を示した。結果を見た者たちは、小規模ですんでよかった、と胸を撫で下ろしたという。安倍首相の靖国神社参拝の影響の程度は測れないが、中国側が、軍事衝突の可能性が高まったと認識したことに間違いはない。

軍事的緊張を伴わない関係構築を

 中国だけではない。米国及び欧州も、日本が地域の安定を害したという認識を示した。26日の内に、駐日米国大使館が「米国は失望している」という声明を出したのはその表れである。「米国は、首相の過去への反省と日本の平和への決意を再確認する表現に注目する」という最後の一文は、日本に対して、「そう考えるなら、そう行動すべき」という意味だ。1月4日には、ヘーゲル国防長官が小野寺防衛大臣と電話会談し、中韓両国との関係改善の重要性を強調した。オバマ政権は今後も、日本に、中韓との関係改善を働きかけていくという。

 EUも26日、知日派で知られるアシュトン外交安全保障上級代表の報道官の「今回の参拝は、特に中国や韓国との関係改善に貢献するものではない」という声明を発表した。

 日中間の対話のレベルは、2005年に比べて明らかに低くなっている。例えば、2005年には局長級会談が出来たが、今は課長級しか実施できない等である。これは、省庁、すなわち対話の分野によって温度差がある。そうした状況下でも、日中両国は、軍事的緊張を伴わない関係構築を模索しなければならない。

 一方で、日中間には徐々に経験を積んでいく余裕はない。日中間には、既に不測の事態を誘発しかねない緊張がある。日中直接対話が出来ない現在、米国しか東アジアのバランスをとることが出来ない。日本は、米国を通して地域に日本の意図を反映させるしか方法はないということだ。


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