スペイン東部を中心に10月末に発生した集中豪雨で、1日までに200人以上の死亡が確認された。その多くは東部バレンシア州で確認されているが、死者数は今後さらに増えるとみられている。
被災地では、緊急対応チームが行方不明者数十人の捜索を続けている。
この豪雨はスペインで過去最悪レベルの洪水被害をもたらした。複数の橋が破壊され、町は泥で覆われた。水や食料、電気の供給が途絶え、複数のコミュニティが孤立状態となっている。
地元当局が洪水の危険性をより早期に警告していれば、もっと多くの人命が救われていたはずだと指摘する住民もいる。
バレンシア州アルダヤ在住の、フアン・ゴンザレスさんもその一人。ゴンザレスさんはこの地域は壊滅的な損失を被ったとBBCに語った。
「ここは鉄砲水が発生しやすい地域だ。こうなることがわかっていながら、地元当局が何もしなかったなんて言語道断だ」
地元住民のアウグスティンさんは、妻と子供たちと暮らしていたアパートが完全に浸水し、実家に移らなければならなくなったと話した。
南部では警戒続く
最悪の天候はバレンシア州と地中海沿岸を通過した。しかし南部では依然として警報が出されており、2日にかけてさらに激しい雨が降る可能性がある。
これらの地域には、すでに豪雨でひどい打撃を受けているウエルバ県も含まれる。同県カルタヤ市ではわずか10時間で2カ月分の雨が降った。
さらに南部のヘレス市では大雨で川の水位が上昇し、数百世帯が避難を余儀なくされた。
当局の対応が遅すぎたと
こうした中、災害救援サービスの対応が遅すぎたとの非難や、スペインには自然災害に対応するための十分な警報システムが整っているのか疑問視する声が上がっている。
地方政府が監督する市民保護機関は10月29日午後8時過ぎ、バレンシア市とその周辺の住民に携帯電話を通じて緊急警報を発した。この時点で、多くの地域では洪水の水量が急速に増し、すでに大惨事が起きている地域もあった。
バレンシア州の被災地近くで暮らすミレイアさんは、住民は「まったく準備ができていなかった」と述べた。
「多くの人は車内にいて、そこから出られなくなった。そのまま溺れるしかなかった」のだと、ミレイアさんは話した。
現在、数千人のボランティアがスペイン軍や救急隊の救助・清掃活動を支援している。バレンシア州のカルロス・マソン知事は追加部隊が派遣される見通しだと述べた。
ペドロ・サンチェス首相はソーシャルメディアを通じて、ボランティアたちは「スペイン社会の連帯と限りない献身の模範」だと感謝を伝えた。
また、政府は被災者を助けるために必要なことは何でもすると誓った。
これまでに60人以上の死者が報告されているバレンシア州パイポルタでは、救援が遅すぎると多くの住民が不満を口にしている。
「消防士も足りていないし、シャベルも届いていない」と、薬剤師のパコ・クレメンテさん(33)はAFP通信に語った。
被災地では数十人が略奪容疑で逮捕されている。アルダヤ住民の一人はAFP通信に対し、無人となったスーパーマーケットから商品を奪う人たちを目撃したと語った。「みんな必死だ」とこの男性は述べた。
今回の災害の要因の一つは、1年を通じて雨が少なかったことがあげられる。スペイン東部と南部の多くの地域では、地面が雨水を効率よく吸収できない状態になっていた。
また、地球の温暖化が洪水の深刻さを助長した可能性が高い。
地球温暖化が異常気象に与える影響を調査する、国際的な科学者グループ「世界気象分析グループ」(WWA)は予備報告書の中で、スペインを襲った降雨量は気候変動によって12%増加し、その気象現象の激しさが倍加した可能性があるとしている。
(英語記事 Search for Spain flooding survivors continues as torrential rain hits another region)