11月5日のアメリカ大統領選を前に、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領は1日、自分に対立するリズ・チェイニー前下院議員(共和党)について、複数の国で「戦争をしたがった」チェイニー氏は「過激なタカ派戦争屋」だが、「本人が自分の顔に銃を向けられていたらどう思うか、みてみよう」と発言した。これに対してチェイニー氏の支持を得ている民主党候補カマラ・ハリス副大統領は同日、大統領候補として「失格に値する」攻撃的発言だと非難した。
トランプ候補は保守派司会者タッカー・カールソン氏とのトークで、ハリス候補を積極的に支持しているチェイニー前議員について聞かれ、「彼女は本当に頭が悪い」と中傷。自分が大統領当時、米軍をシリアやイラクから撤収させたことに「過激なタカ派戦争屋」のチェイニー氏が怒ったのだとして、「彼女に任せていたら(アメリカは)50ものいろいろな国にいたはずだ」と批判した。
そのうえでトランプ候補は、「ライフル銃の前に彼女を立たせてみよう。銃身9丁から同時に撃たれていたら。そうしたらどう思うか、みてみよう。銃が彼女の顔に向けられていたら」とチェイニー氏について述べた。
さらに、「あの連中はみんなワシントンに座っているときはタカ派の戦争屋で、すてきなビルの中にいて『おお、どうしようか、じゃあ敵のどまんなかに兵1万人を送ってみようか』とか言っているんだ」とも述べた。
この集会は激戦州アリゾナ州の主要都市グレンデイルで行われた。
チェイニー前議員は同日、「独裁者はこうして自由な国を破壊するのです。自分に対抗して発言する者を脅す。私たちは自分たちの国と自由を、暴君になりたい、小さくてつまらない、執念深く、残酷で、不安定な男に託すことはできません」とソーシャルメディア「X」に書いた。
トランプ候補の発言を受けてハリス副大統領は、訪問先の激戦州ウィスコンシン州の空港で記者団を前に、「失格に値する」発言だと非難。「トランプはますます、自分の政治的な対立候補を敵とみなし、果てしなく復讐を求め、ますます不安定になり常軌を逸してきた」と述べた。
さらに、「リズ・チェイニーはタフな人で、見事なアメリカ人で、私は彼女を大いに尊敬している」ともたたえた。
これに対してトランプ候補は自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、「自分はただリズ・チェイニーについて、彼女はタカ派の戦争屋で、しかもばかで、なのに自分自身で戦うガッツはないんだと、そう言ってるだけだ」と書いた。
ワイオミング州から3期にわたり連邦下院議員に選出されたチェイニー元議員は一時、下院の共和党議員団でトップ3に入る地位にいた。父親は、ジョージ・W・ブッシュ政権で副大統領を務めた共和党重鎮のディック・チェイニー氏。ブッシュ政権によるアフガニスタンやイラクへの米軍侵攻に、チェイニー副大統領(当時)は大きな役割を果たした。
娘のチェイニー前下院議員は、2021年1月6日に起きた連邦議会襲撃事件を受けてトランプ前大統領の弾劾訴追に賛成した共和党下院議員10人の1人だった。その後は、襲撃事件を調査する議会特別調査委員会の委員を務めトランプ前大統領がアメリカの民主主義を破壊しようとしていると声高に批判した。その後、2022年中間選挙の共和党予備選では、地元ワイオミング州の選挙区でトランプ派候補ノハリエット・ヘイグマン氏に敗れ、再選の機会を失った。
チェイニー前議員と父のチェイニー元副大統領は今年9月、党派の違いを超えてハリス候補を支持すると表明。議事堂襲撃事件における行動は、トランプ候補に「二度と権力を託してはならないという証拠」だと主張している。チェイニー前議員はその後、激戦州で共和党支持者に訴えかけるためハリス候補の支持集会などに参加し、ハリス候補と肩を並べている。
(英語記事 Trump says Cheney wouldn’t be 'war hawk' if 'guns are trained on her')