東欧モルドヴァで3日、先月実施された大統領選の決選投票が行われ、親EU派の現職大統領マイア・サンドゥ氏(行動と連帯、PAS)が再選を宣言した。サンドゥ氏はほぼすべての開票が終わった時点で、親ロシア派のアレクサンドル・ストヤノグロ氏(社会党、PS)を僅差でリードしていた。
先月20日に実施された1回目の投票では、サンドゥ氏が最多得票したものの当選に必要な過半数には及ばず、決選投票に決着が持ち越された。
この緊迫した決戦投票は、モルドヴァがEUと共に歩むのか、それともロシアとの緊密な関係を維持するのかのどちらかを選ぶものだと受け止められていた。
サンドゥ現大統領は3日、2期目続投を主張した。
ほとんどの暫定結果の集計が終わった時点で、サンドゥ氏は55%近い得票率でリードしていた。サンドゥ氏は3日遅くの演説で、自分はすべてのモルドヴァ人のための大統領になると約束した。
親ロシア派の社会党の支持を受ける対立候補ストヤノグロ氏は、ロシア政府との関係をより緊密なものにすると約束していた。
サンドゥ氏の国家安全保障顧問は選挙期間中、モルドヴァの選挙プロセスに対するロシアからの「大規模な干渉」があり、「選挙結果をゆがめる可能性が非常に高い」と指摘していた。
ロシアはすでに、この選挙への干渉を否定している。
10月26日には東欧ジョージアの議会選挙でロシア寄りの与党が勝利したが、親欧米派のサロメ・ズラビシヴィリ大統領は「ロシアの特別作戦」が行われていたと述べ、ロシアの選挙干渉を主張した。
サンドゥ氏によって検事総長を解任されたストヤノグロ氏は、自分はロシア政権寄りではないとしている。
投票が締め切られると、サンドゥ氏とストヤノグロ氏はそれぞれ有権者に感謝を述べた。ストヤノグロ氏は公用語のルーマニア語だけでなくロシア語でも演説した。モルドヴァでロシア語は、旧ソ連時代から広く使われている。
サンドゥ氏、都市部や若者から支持集める
投票は3日午後9時に締め切られた。特に海外の投票所における在外投票の投票率が高く、全体の投票率は4年前の前回選挙を上回った。
ストヤノグロ氏は序盤でリードを奪い、暫定結果によるとモルドヴァ国内で51%超の得票率を獲得した。サンドゥ氏は首都キシナウで大きくリードし、在外投票者の間では完全に優勢だった。
3日遅くに得票がストヤノグロ氏を上回ると、サンドゥ氏の陣営本部では歓声が上がり、「勝利」コールが沸き起こった。
サンドゥ氏はかすれた声で、同胞たちがモルドヴァを救い、「歴史書に書かれるにふさわしい民主主義の教訓」を与えてくれたとたたえた。
そしてロシア語でこう語った。「私を支持してくれた人、ストヤノグロ氏に投票した人、どちらの声も聞きました。威厳のある未来を目指す私たちの選択において、敗者は1人もいない(中略)私たちは団結する必要がある」。
サンドゥ氏の外交政策顧問オルガ・ロスカ氏は、この選挙結果を誇りに思うとBBCに語った。
モルドヴァ国内での得票率でストヤノグロ氏が上回ったことは意外だったかと尋ねると、ロスカ氏はモルドヴァ国内での投票と在外投票は同じものとしてとらえるべきだと答えた。「私たちは国内にいるモルドヴァ人と、外国にいるモルドヴァ人を区別したことは一度もない。モルドヴァ人を一つの家族として見ているので」。
モルドヴァは来年に議会選挙を控えている。ロスカ氏は、サンドゥ大統領は「(国民の)変化を求める意向に耳を傾けていることを明確に示している。(大統領選の2度の)投票の間に何度か、汚職との闘いを強化し、司法改革を加速させなければならないと述べている。(サンドゥ氏は)この仕事に取り組んでいる」と述べた。
最終的な結果は4日に発表される見通し。
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は「今回の選挙で直面した困難を克服するには稀有な強さが必要だ」と述べ、サンドゥ氏を祝福した。
「モルドヴァとその国民のための欧州の未来に向けて、あなたとの仕事を継続できることを嬉しく思う」と、フォン・デア・ライエン氏はソーシャルメディアに投稿した。
ストヤノグロ氏は「非政治的な大統領」になると約束し、「西側と東側の両方との調和の中で発展すべきモルドヴァ」のために自分は投票したと述べた。
同氏は特に農村部や南部で票を集めた。一方のサンドゥ氏は、都市部や若い有権者の間で優勢だった。
サンドゥ氏は自身の票を投じた後、票や国を買収しようとする「泥棒」について、警告した。
サンドゥ氏の国家安全保障顧問スタニスラフ・セクリエル氏は、ロシアは有権者を投票所に運ぶためにバスや大型チャーター機を複数手配したとした。
モルドヴァ国内や、イギリス・リヴァプールやノーサンプトン、ドイツ・フランクフルトやカイザースラウテルンの投票所では、爆発への懸念から投票が一時中断されたと、セクリエル氏は付け加えた。
親ロシア派が票を買収か
51年間にわたり旧ソヴィエト連邦の構成共和国だったモルドヴァは、ウクライナとルーマニアの間に位置する欧州最貧国の一つ。人口は250万人で、国外居住者は120万人。
モルドヴァ当局は以前から、親ロシア派でロシア在住のモルドヴァ人実業家および政治家のイラン・ショール氏がロシア政府のために、3900万ドルを費やし、13万8000人のモルドヴァ人に金銭を支払うなどして票を買収しようとしていると警告していた。
ショール氏は不正行為を否定しているが、EUに対して「断固としたノー」を突きつける自身の呼びかけに賛同する用意のある者に金銭を支払うと約束している。
複数の批評家や政治家は、ストヤノグロ氏が「トロイの木馬」のような存在だからではなく、ロシアがストヤノグロ氏を力強く支援しているため、同氏が勝利すればドナウ川と黒海の周辺地域の政治情勢を根本的に変える可能性があると警告していた。
ロシア・モスクワやイタリアの在外投票所には行列ができた。親ロシア派が実効支配するモルドヴァ東部トランスニストリア地域の有権者は、投票のためにドニエステル川を渡ってモルドヴァの支配地域に入らなければならなかった。トランスニストリア地域にはロシアの軍事基地と巨大な武器庫がある。
モルドヴァの選挙管理委員会は、ロシアやベラルーシ、アゼルバイジャン、トルコで、有権者が組織的かつ違法に空路や陸路で移送されたとの報告を把握しているとし、国民に対し、違反行為についてさらなる報告を求めた。
1回目の投票で最多得票したのはサンドゥ氏だったが、何人かの候補は今回、ストヤノグロ氏の支持に回った。1回目の投票で3位だった候補は、サンドゥ氏とストヤノグロ氏のいずれも支持しなかった。
10月20日には、憲法を修正して欧州連合(EU)に加盟することへの是非を問う国民投票も同時に実施された。
賛成が僅差で反対を上回ったが、サンドゥ氏は30万票を買収しようとした明確な証拠があると述べた。
(英語記事 Pro-EU leader claims Moldova victory despite alleged Russian meddling)