ドイツも苦しむ脱原発が日本で可能なのか?
ロシアが引き起こしたエネルギー危機は、ドイツのエネルギー価格を上昇させ、原発に関するドイツの世論を大きく変えた。
22年末に予定された最後の3基の閉鎖は、エネルギー危機による電気料金上昇と供給の不安定化を受け、冬季の需要増を乗り切るため23年4月15日まで延期された。
世論調査会社YouGovによる閉鎖直前の調査では、ドイツ国民の33%が原発の無期限の継続利用、32%が期限付きの利用を望み、脱原発の支持は26%に留まった。
しかし、連立政権に副首相兼経済気候保護相と環境相を送り込んだ緑の党の支持者は56%が脱原発を支持していた。世論に反し政府は脱原発を実施した。
脱原発を支えたのは、フランスからの電力輸入だった。脱原発直後からフランスのドイツ向け電力輸出量は急増した(図-1)。フランスの発電量の約7割は原発だ。
自動車産業の中心でもあるドイツ南部には11年時点で11基の原発が運転していたので、国内南北間の送電線に大きな容量は必要なかった。脱原発後北部の風力発電の余剰電力の送電は叶わず、南部はフランスの電力に依存することになった。送電線の増強工事の完成予定は28年だ。
ロシア産天然ガスの輸入量削減のため米国、中東の液化天然ガス(LNG)を輸入したので、エネルギー価格は上昇した。頼みの綱だったロシアとの海底パイプライン・ノルドストリーム1と21年に完成した2は、ロシアのウクライナ侵攻後の22年9月に何者かが爆破し使用不能になった。
ドイツでは電力需要量が減少する中で、発電量に占める再エネ比率は増えているが、電源別発電量の推移(図-2)を見ると、導入された再エネは段階的に減少した原子力発電を代替した側面が大きい。
その結果は、電気料金の上昇だった。ドイツの家庭用電気料金は、原子力の減少と再エネの増加に加え、火力発電用燃料費の高騰もあり値上がりが続いた(図-3)。昨年の価格は、日本の家庭用電気料金の2倍だ。
ドイツの脱原発を可能にした事情も変わり、ドイツは電気料金上昇に直面した。多くの国民は脱原発を嘆いているに違いない。
かつて23%あった緑の党の支持率は、今10%だ。CDU31%、SPD16%、ドイツのための選択肢18%を下回っている。連立3党の支持率は30%しかない。