2024年10月28日(月)

World Energy Watch

2024年10月24日

 今回の衆議院総選挙の争点の1つとなっているエネルギー・原子力政策に関して、石破茂首相に対し、僭越ながらいささか卑見を申し上げたい。

愛媛県の伊方原発。30年超の運転を決めたが、そうした原発の事例は少ないのが現実だ(paprikaworks/gettyimages)

これ以上の原発低減の余地は乏しい

 石破首相は所信表明演説では原発の利活用を明言し、岸田文雄前政権の原子力推進政策の継承を印象付けた。しかし、石破首相は自民党総裁選ではっきり「原発ゼロ」に言及しており、首相就任後も「再生可能エネルギーが増大すれば結果的に原子力のシェアは減少する」と述べて、基本的に原子力に対し曖昧な、やや消極的な姿勢と思われる。この辺のところは、もし今般の総選挙に勝ち、政権を維持されることになった場合には是非はっきりさせていただきたい。

 周知のように、福島原発事故後、自公政権は一貫して「再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する」との立場をとっており、現行の第6次エネルギー基本計画でもそう明記されているが、そもそも原発依存度の低減とは何を意味するか。

 福島事故以前、日本の原子力は、全国で54基が稼働し、発電電力量の30%前後を占めていた。旧原子力委員会時代最後の原子力政策大綱では近い将来40%を目指すとしていた。

 それが同事故の結果、一気に24基が廃炉(閉鎖)となり、残り36基(未申請を含む)のうち新規制基準に合格して現在稼働しているのは僅か12基、電源構成におけるシェアは6%に過ぎない。あれだけの大事故を起こしたのだからやむを得ないとはいえ、あまりにも厳しい状況である。すでに十分すぎるほど低減しているのだ。

 脱炭素化が進む中、これ以上原発のシェアを低減させることは、国のエネルギー安全保障上不可能であり、まして、2030年時点の「原子力20~22%」の政策目標は到底達成できない。そのことが誰の目にもはっきりしている以上、いつまでも単なる枕詞かリップサービスのように「原発依存度の低減」と言い続けるのは止め、この際原発拡大の重要性を国民に向かって正面から訴えるべきだ。

 ちなみに、スウェーデン、イタリア、イギリス、ベルギー、スイスなどのヨーロッパ諸国でも一時期の脱原発政策を改め、次々に原発回帰に舵を切っている。一方、脱原発を強引に実現したドイツは現在電力料金の高騰で苦境に陥っている。日本は以って他山の石とすべきである。


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