10月にドイツで面談したドイツ産業連盟の方からは、「いまや緑の党を支持することはクールではなくなった」との発言もあった。
2050年とはいえ、日本が脱原発を進めることは不可能だろう。連携線があり、内外の化石燃料にも恵まれたドイツでも電気料金の上昇と電力輸入増に直面した。連携線も国内資源もない日本が100%再エネ電源に依存すると、供給安定化のため高額な蓄電池が必要になる。電気料金はどこまで上がるのだろうか。
加えて、中国は、太陽光パネル、風力発電設備、蓄電池部品の重要鉱物全てで大きな世界シェアを持つ。再エネ設備の増加は中国依存を高め安全保障上の問題ももたらす。
エネルギー政策の与える影響
ドイツは30年に電力供給の80%を再エネで賄う計画だ。この時の電気料金はいくらになるのだろうか。ドイツ産業界の方に質問したが、答えは「5年後、10年後のことは分からない。推移を見るしかない」だった。
エネルギー価格の上昇に直面しているドイツでは、エネルギー多消費型産業のいくつかの企業はエネルギー価格に競争力がある海外、特に米国、への工場移転を検討していると言われている。
ドイツでも、電化の進展、データセンターなどが今後電力需要を増加させるとみられており、23年の電力需要量5107億kWhは、30年には7000億から7500億kWhまで増加するとの予測もある。この時ドイツは電力需要を賄えるのだろうか。
日本もドイツと同様、今後電力需要量は大きく増加する(【予備電源を確保できないニッポン】なぜ、電力会社は応募しなかったか、AI時代に設備がなくなる可能性 )。国内に資源を持たず、電力の輸出入もできない日本が増大する需要に応え安定供給と競争力のある電気料金を実現する方法は、原子力発電抜きでは難しい。
立憲民主党が主張する再エネ100%を支えるためには、遠隔地に設置される洋上風力設備からの送電設備と発電できない時に備える蓄電池、要は再エネの電気を利用するための空間、時間差をうめる統合費用と呼ばれるコストが必要だ。今後のイノベーションに期待しても、50年までに、このコストが大きく下がる可能性は低い。
00年からの四半世紀で電力コストを大きく下げるイノベーションはなかった。これからの四半世紀で電力供給の世界が劇的に変わる可能性は薄い。
電気料金が産業と家庭に与える影響は極めて大きい。エネルギー多消費型産業は、電気料金が高騰するならば、海外での工場あるいはデータセンター立地を考えざるを得なくなる。
現実とこれから増える電力需要を見据えたエネルギー政策を打ち出す政権ができなければ、私たちの所得も増えない。