米ペンシルヴェニア州の裁判所は4日、米富豪イーロン・マスク氏が行っている、米大統領選挙の激戦州で毎日1人の登録有権者に100万ドル(約1億5000万円)を贈る活動について、州法違反だとして地方検察が求めた差し止めを認めない判断を示した。これにより、有権者への金銭提供は続けられることになった。
共和党候補のドナルド・トランプ前大統領を支持しているマスク氏は、自身の政治活動委員会の「アメリカPAC」を通じ、ペンシルヴェニア、ジョージア、ネヴァダ、アリゾナ、ミシガン、ウィスコンシン、ノースカロライナの激戦7州で、憲法支持の請願書に署名した登録済みの有権者に、11月5日の投票日まで毎日1人に100万ドルを贈っている。
マスク氏の弁護人は4日、法廷での審理で、最後の受取人はすでに決定していると語った。
金銭が提供される有権者は宝くじ方式で無作為に選ばれていると、多くの人は考えていた。しかし実際にはアメリカPACが選んでいたことを、弁護人はこの日の審理で明らかにした。
フィラデルフィア地区検察局のローレンス・クラズナー地方検事は先月28日、マスク氏が「違法な宝くじ」を運営しているとして、活動の中止を求める民事訴訟を起こしていた。
ペンシルヴェニア州のフィラデルフィア一般訴訟裁判所(一審裁判所)のアンジェロ・フォグリエッタ判事は、審問の数時間後に下された判決について、すぐには理由を述べなかった。
マスク氏とアメリカPACは、裁判が大統領選に関するものだという理由で、審理を連邦地裁に移すよう求めていたが、ペンシルヴェニア東部の連邦地裁は1日、州地裁への差し戻しを命令していた。
100万ドルの受取人、宝くじ方式ではなく
AP通信によると、マスク氏の弁護人クリス・ゴーバー氏は「100万ドルの受取人は偶然選ばれるものではない」と審問で述べた。「今日そして明日、100万ドルの受取人として誰が発表されるのか、我々は正確に把握している」。
ゴーバー弁護士は、アメリカPACはすでにミシガン州の有権者を最後の受取人にすると決定していると述べた。
アメリカPACは4日、同日分の100万ドルをアリゾナ州のジョシュアという男性有権者が獲得したと、マスク氏が所有するソーシャルメディアX(旧ツイッター)に投稿した。
同団体は「選挙日まで毎日、(憲法支持の請願書に)署名した人の中から、アメリカPACのスポークスパーソンとして100万ドルを獲得する人が選ばれる」と付け加えた。
マスク氏が先月に金銭提供を発表した際、多くの人は100万ドルの受取人が、合衆国憲法修正条項第1条と第2条を支持する請願書に署名した登録有権者の中から無作為に選ばれるものだと考えていた。
マスク氏も選挙イベントで、「これから投票日まで毎日、署名してくれた人たちに100万ドルを無作為に贈るつもりだ」と述べていた。
この数日後、米司法省は連邦選挙法違法の疑いがあるとアメリカPACに警告。フィラデルフィア地区検察局のクラズナー地方検事が活動の中止を求める民事訴訟を起こした。
トランプ候補のため激戦州で活動
マスク氏は共和党のトランプ候補のために全米の激戦州で積極的に活動している。アメリカPACは、複数の世論調査でトランプ候補と民主党のカマラ・ハリス候補の支持が拮抗していることが示されているペンシルヴェニア州での活動に力を入れている。
クラズナー地方検事の事務所弁護士はロイター通信に対し、法廷でのゴーバー弁護士の発言は自分たちの「責任を完全に認めるもの」だと述べた。
検察側は審問の中で、100万ドルの当選者がアメリカPACの広報担当となること「だけを私たちは望んでいる」とマスク氏が語る動画を公開したと、ロイター通信は伝えた。
アメリカPACのディレクター、クリス・ヤング氏は法廷で、100万ドルの受取人は審査を受け、同団体と価値観が一致していなければならないと述べたと、米メディアは報じた。
ロイター通信によると、100万ドルの受取人は秘密保持契約を結び、契約内容について公言すことを禁じられている。
マスク氏は4日の審理には出席しなかった。