ロシアとウクライナは9日から10日にかけて、双方の領土に対し、開戦以来最大規模のドローン(無人機)攻撃を実施した。
ロシア国防省はウクライナのドローン84機を6つの地域で撃墜したと発表した。一部のドローンはモスクワに接近し、市内にある3つの主要空港の発着便が迂回(うかい)を余儀なくされた。
一方でウクライナ空軍は、ロシアが9日夜にドローン145機をウクライナ各地に向けて発射したが、そのほとんどは迎撃されたと発表した。
こうした攻撃は、アメリカのドナルド・トランプ次期大統領が紛争終結に向けてロシアとウクライナの双方に圧力をかけるかもしれないと予想される中で行われた。
モスクワを標的としたウクライナによる空爆は、ロシアの首都に対する開戦以来最大規模の攻撃でもあった。モスクワ州知事は「とてつもない」攻撃だと述べた。
ロシア当局によると、ウクライナのドローンの大半はモスクワ州ラメンスコエ、コロムナ、ドモジェドヴォの各地区で撃墜された。
モスクワの南西に位置するラメンスコエでは5人が負傷し、落下してきた破片で家屋4棟が火災に見舞われたと、ロシア国防省は発表した。さらに、ドローン34機がラメンスコエ上空で撃墜されたという。
ラメンスコエでは9月、女性1人がドローン攻撃で死亡している。昨年5月にはモスクワ中心部にあるクレムリン(ロシア大統領府)の近くでドローン2機が破壊されたほか、市内のビジネス街でも数回のドローン攻撃があった。
ドローン攻撃を受けたウクライナ南部オデーサ州では、少なくとも2人が負傷した。複数の画像にはいくつかの建物から炎が上がる様子や、攻撃による被害の状況が写ってた。
ウクライナ空軍は、ロシアが発射したイラン製ドローンのうち62機が撃墜されたと発表した。別の67機はレーダーから「消失」し、10機はウクライナの領空を離れてロシアや近隣のベラルーシ、モルドヴァへ向かったという。
AFP通信の米シンクタンク戦争研究所(ISW)のデータ分析によると、ロシア部隊は10月、2022年3月以来最大のウクライナ領土を獲得したとされる。
しかし、英軍制服組トップのサー・トニー・ラダキン国防参謀総長はBBC番組で、ロシアは先月に開戦以来最悪の死傷者を出したと述べた。
ラダキン氏によると、ロシア軍は先月、「毎日」平均約1500人の死傷者に見舞われた。
トランプ次期大統領の対応は
5日投開票の米大統領選で、共和党のドナルド・トランプ候補の勝利が確実となったことを受け、トランプ次期大統領がウクライナとロシアの戦争にどのようにアプローチするのかをめぐり憶測が盛んになっている。
トランプ次期大統領は選挙戦の中で常々、、この戦争を大統領就任後「1日で」終わらせられると述べていた。ただ、その方法について詳細は明らかにしていない。
トランプ第1次政権下で顧問を務めたブライアン・ランザ氏はBBCに対し、次期政権はウクライナがロシアから領土を取り戻すことよりも、和平実現に焦点を当てるだろうと述べた。
これについてトランプ次期大統領のスポークスマンは、ランザ氏は「彼(トランプ次期大統領)の代弁者ではない」とし、次期大統領をこの発言から遠ざけた。
ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は10日、国営メディアを通じて、アメリカの次期政権からの「前向きな」シグナルについて語った。
ぺスコフ氏は、米次期大統領が選挙戦で語っていたのは平和を望むというもので、ロシアを打ち負かしたいという願望ではないと主張した。
大統領選での当選が確実になったトランプ次期大統領はすでに、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と電話協議している。協議は「30分ほど」続いたと、情報筋はBBCに語った。
ゼレンスキー大統領はこれまで、領土で譲歩する可能性を否定し、アメリカの援助がなければウクライナは戦争で負けるだろうと警鐘を鳴らしている。
(英語記事 Moscow targeted as Ukraine and Russia trade huge drone attacks)