オランダの首都アムステルダムで10日、デモ禁止令に違反したとして、親パレスチナ派の抗議者数十人が警察に拘束された。デモ禁止令は、イスラエルのサッカーチームのファンが若者らに襲撃された事件を受けてのもの。事件の前には市内でイスラエル人がパレスチナの旗を燃やすなど、双方の対立が数日にわたり続いていたという。
アムステルダムのダム広場には10日、数百人が集まり、パレスチナ・ガザ地区での紛争終結を訴えるとともに、公共の場でのデモ禁止令に異議を唱えた。
アムステルダムでは7日夜、欧州サッカー連盟（UEFA）欧州リーグのアヤックス・アムステルダム対マッカビ・テルアヴィヴ（イスラエル）の試合を観に同市を訪れていたマッカビのサポーターに対し、スクーターに乗った若者たちが「ひき逃げ」のような攻撃を繰り返した。市内ではこれに先立ち、マッカビのイスラエル人サポーターがパレスチナの旗を燃やすなど、双方の対立が数日にわたり続いていた。
こうした事態を受け、アムステルダムのフェムケ・ハルセマ市長は8日、同市を「高リスク警備地域」として、少なくとも週末いっぱいは公共の場での集会を禁止すると発表した。
しかし抗議者たちは10日、ガザ地区でのイスラエルの行動やマッカビ・サポーターの行動を非難するため、抗議する自由は認められるべきだと主張した。
抗議者の一人、アレクサンダー・ファン・ストックムさんは10日、「この抗議は、ユダヤ人差別とはまったく関係ない。私たちの街を破壊したイスラエル人フーリガンに対抗するためのものだ」と、AFP通信に話した。
在オランダ・イスラエル大使館は先に、ダム広場に近づかないようアムステルダム市内のイスラエル人に警告していた。
イスラエル政府は、国外でイスラエル人が参加するスポーツや文化イベント、とりわけ14日にフランス・パリで開催されるサッカーの試合を避けるよう、国民に勧告している。
「ジェノサイドに抗議」
10日の抗議に参加した一人は、「パレスチナ人の抵抗を抑圧する武器として『反ユダヤ主義』だという主張が利用されることを、我々は拒否する」と、ロイター通信に述べた。
抗議行動に参加した100人以上が拘束されたと、ロイター通信は報じた。アムステルダム警察は複数の逮捕者が出たことを認めたが、人数は明らかにしていない。
デモ禁止令が出された後、オランダの活動家フランク・ファン・デア・リンデ氏は10日にデモを実施できるよう緊急許可を申請した。
ファン・デア・リンデ氏はソーシャルメディアに、「ガザでのジェノサイド（集団虐殺）」に抗議したいのだと投稿。「私たちは、デモを行う権利が奪われるのを許さない」と述べた。
アムステルダムの地方裁判所は10日、ファン・デア・リンデ氏の要求を退けた。「今週末の市内でのデモ禁止について、市長は正しく決定した」とした。
オランダ紙「ダ・テレグラフ」は、逮捕者の中にファン・デア・リンデ氏が含まれると報じている。
市内で相次ぐ対立
7日の襲撃事件では5人が入院し、少なくとも62人が逮捕された。オランダ当局は、反ユダヤ主義に動機付けられた事件だとしている。襲撃者は、マッカビのサポーターを見つけようと街中を探し回っていた。
この暴力行為に対して、欧州やアメリカ、イスラエルの指導者から非難が上がった。
事件のあった11月7日は、1938年にナチスによるドイツ系ユダヤ人に対する迫害事件「水晶の夜（クリスタルナハト）」があった日の直前だったこともあり、抗議は激しさを増した。
第2次世界大戦中のホロコーストでは、オランダ在住のユダヤ人の約75％が殺害された。
アムステルダム警察によると、前日の6日夜にもトラブルが発生。ペーター・ホラ本部長は、「双方で事件が発生した」と話した。6日にはマッカビのイスラエル人サポーターがタクシーを襲い、パレスチナの旗を外壁からはぎとって燃やしたという。
各国が警戒
イスラエルの国家安全保障会議（NSC）は7日の襲撃事件を引き合いに、公共の場での「あらゆる種類の」デモを回避し、「イスラエル人あるいはユダヤ人だと示す可能性のあるもの」を隠すよう国民に求めている。
在オランダ・イスラエル大使館は先に、ダム広場に近づかないようアムステルダム市内のイスラエル人に警告。「重大な暴力事案に発展する恐れがある」としていた。
NSCはまた、「ベルギーのブリュッセルやイギリスの複数主要都市、アムステルダム、仏パリなど、欧州の複数都市でイスラエル人に危害を加える準備が進められていることが確認されている」と主張した。
パリ警察の本部長は、14日のUEFAネーションズリーグの試合に備えて、スタジアムとパリ全域に4000人の警官を配備するとしている。
（英語記事 Dozens detained after protesters defy ban in Amsterdam）
