国際刑事裁判所(ICC)は11日、カリム・カーン主任検察官に関して性的不正行為の告発があったことを受け、外部調査を実施すると発表した。
カーン氏をめぐっては、望まない性的接触や「虐待」などをしたとの告発に関する文書が存在すると、メディアが報じている。
カーン検事は、性的不正行為の疑惑について否定している。
検事は声明を発表し、「この件については(自分が)前から調査を求めていた」と説明。「今回のプロセスに関わる機会を歓迎する」とし、調査が進められる間は「検察官としてのすべての職務」を続けると付け加えた。
また、「すべての人の権利が完全に尊重されるため」に、調査に絡む一切の問題は、自分の部下ではない検察官らが対応に当たるとした。
カーン氏はICCの監察部門による調査を求めていた。だが、ICCの運営組織はこの日、「外部調査」を実施する方針を明らかにした。
カーン氏をめぐる報道
10月27日付の英紙ガーディアンによると、法曹関係者の30代女性が、カーン氏から望まない性的誘惑を受けたと、正式に申し立てた。この女性は、ICC監察部門・独立監視機構(IOM)の調査能力を疑問視しているという。
カーン氏は、被害を訴えている女性と1対1で接触しないよう言われていたにもかかわらず、女性に対して、申し立ての内容を否定するよう働きかけたとされる。ただ、カーン氏本人は、そうした働きかけを否定しているという。
ICCを監督する組織のトップ、パイヴィ・カウコランタ氏は先月、被害を訴えた女性にIOMが接触していると説明したが、その段階では調査を進める立場にはないと述べていた。
カウコランタ氏は11日に声明を発表。IOMに調査能力はあるが、「今回の特別な状況を考慮して」、「例外的に外部調査に頼る」ことには反対しないとした。そして、「完全に独立した公平で公正なプロセスを確保するため、外部調査が進められる」とした。
ガザ紛争めぐって逮捕状請求
カーン氏は5月、パレスチナ・ガザでの戦闘をめぐる戦争犯罪容疑で、イスラエルとイスラム組織ハマスの指導者らの逮捕状を請求した。以来、同氏とICCを厳しく監視する動きがみられている。
カーン氏が逮捕状を請求したのは、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相、ヨアヴ・ガラント国防相(当時)、イスラム組織ハマスのガザ地区における指導者ヤヒヤ・シンワル氏、軍事部門トップのモハメド・デイフ氏、政治指導者イスマイル・ハニヤ氏。カーン氏はこれらの人々について、戦争犯罪と人道に対する罪を犯したと信じるに足る合理的な根拠があるとした。
シンワル、デイフ、ハニヤ各氏はその後、イスラエルによって殺害された。
カーン氏はこれまでの声明で、イスラエルを明白には非難していないが、自身に関する性的不正行為の疑惑と、自身の立場を弱めようとする動きを同列に論じている。「私と国際刑事裁判所がさまざまな攻撃や脅威にさらされている瞬間だ」とも述べている。
ただ、性的不正行為の疑惑は、ガザ紛争に絡んで逮捕状を請求するより前に持ち上がったとみられている。
カーン氏による逮捕状請求については現在、ICCの裁判官3人でなる合議体が検討している。