イスラム組織ハマスの政治事務所があるカタールの政府とパレスチナ自治政府の高官は19日、パレスチナ・ガザ地区の外にいる最高位のハマス指導者やその交渉チームの主要人物はもはやカタールの首都ドーハにはいないと明らかにした。
イスラエルとハマスとの交渉について、カタール政府は仲介役を一時的に中断したと、当局は10日に発表している。
カタール外務省の報道官は、ガザ停戦合意の仲介を一時中断したことで、ハマスの政治事務所はもはや機能していないと述べた。一方で、事務所が永久的に閉鎖されるわけではないと強調した。
パレスチナの当局者はBBCに対し、ハマスの交渉担当者はこの地域での存在感を調整するとともに、受け入れ国を困惑させないよう、自分たちの所在を秘密にしているのだと語った。
この人物は、ハマスのハリル・アル=ハイヤ副代表はトルコにいる可能性が高いとも述べた。アル=ハイヤ氏はこの2カ月の間に何度かトルコを訪れている。
また、カタールがハマスに同国を離れるよう正式に求めたとする報道を否定する一方で、カタールがアメリカのジョー・バイデン大統領とドナルド・トランプ次期大統領との間で緊張が生じないよう、自国の位置付けに慎重になっているようだとした。
カタールとハマスの関係に変化か
2012年からハマスの政治部門を受け入れてきたカタールは、同組織とイスラエルの間接的な交渉の促進で重要な役割を果たしてきた。しかし最近の動きからは、両者の関係性に変化が生じていることがうかがえる。
10日には、カタールがイスラエルとハマスとの交渉における仲介役を一時的に中断したと発表。「残酷な戦争を真剣に終わらせるつもりがあるのだと、その姿勢を当事者が示した時点で(中略)カタールは仲介を再開する」とした。ハマス指導者たちがカタールを離れるよう求められたとの報道については否定した。
カタール外務省のマジェド・アル=アンサリ報道官は19日、「交渉チームに含まれるハマスの指導者たちは現在ドーハにはいない」ことを認めた。
「みなさんご存知のように、彼らはさまざまな国の首都を行き来している、それが何を意味するのか、詳述するつもりはない」と、同報道官は付け加えた。
「ただ、みなさんにはっきり言えるのは、ドーハのハマス事務所は交渉プロセスのためにつくられたものだということだ。仲介プロセスがない以上、事務所自体に何の機能もないのは明らかだ」
また、「事務所を永久的に閉鎖するという決定が下されるのなら、その決定については我々から直接知らされることになる。メディアの憶測の一部であってはならない」とも強調した。
ハマス指導部の所在は
ハマスは18日にメッセージアプリ「テレグラム」に声明を投稿。ハマスの情報筋は「一部のイスラエルメディアが広めた、ハマス指導部がカタールからトルコに向かったという話を否定した」とした。
トルコ外務省も同様に否定している。情報筋はトルコのニュースチャンネルNTVに対し、「ハマス政治部門のメンバーは時折トルコを訪問している。ハマス政治部門がトルコへ移ったという主張は、真実を反映していない」と語った。
こうした中、米国務省のマシュー・ミラー報道官はワシントンでの記者会見で、ハマス指導部の所在に関する「報道内容に異議を唱える立場にない」と述べた。
「アメリカを代表して申し上げたいのは、凶悪なテロ組織の指導者たちが、どこであろうとも、快適に暮らすべきだとは我々は考えていないということだ。そうした場所には我々の重要な同盟国やパートナー国の主要都市も含まれる」
「(ハマス指導部の)多くの人物はアメリカで起訴されている。しばらく前から起訴されている。我々は彼らの身柄がアメリカに引き渡されるべきだと考えている」と、ミラー報道官は付け加えた。
トルコがハマス指導者たちを受け入れていた場合、北大西洋条約機構(NATO)加盟国としてトルコが何らかの影響を受ける可能性があるかどうかについては推測を避けた。
ハマスはイスラエル、アメリカ、イギリスなど多くの西側諸国からテロ組織に指定されているが、トルコは同組織をテロ組織とみなしていない。ハマスのメンバーはしばしば、トルコで過ごしている。
トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、ハマスは抵抗運動組織だと擁護し、ガザ地区でのイスラエルの軍事作戦を激しく批判している。
ハマスは2023年10月7日にイスラエル南部を奇襲し、約1200人を殺害、251人を人質にとった。イスラエルは直後に、ガザ地区でハマス壊滅作戦を開始した。
それ以来、ガザ地区では4万3970人以上が死亡していると、ハマス運営のガザ保健省は発表している。
19日にガザを訪れたイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、戦争終結後のガザ統治において、ハマスにはいかなる役割も担わせないとの決意を改めて表明した。
ネタニヤフ氏はまた、ガザに残る人質全員を生きたまま帰還させると改めて誓い、人質をイスラエル側に引き渡した者には500万ドル(約7億7700万円)を支払うと繰り返し述べた。
イスラエルによると、ガザでは今も97人の人質が拘束されている。そのうち34人はすでに死亡したとされる。昨年10月7日以前にも4人が連れ去られているが、うち2人は死亡したとみられている。
(英語記事 Hamas leaders no longer in Doha but office not permanently closed, Qatar says)