原発の販売単価は火力・水力より高い?
記事では、発電コストにも疑問符が付くとして、「販売単価 火・水力上回る」との小見出しを付けている。本文を読めば石炭火力と水力発電の電源開発の卸価格より原子力の日本原電の卸価格が高いと分かる。石炭火力と水力より原子力が高いのは事実だが、石油あるいは天然ガス火力のコストは原子力より高いから、小見出しの火力というのは正確ではなく、読者には誤解を与える。
石炭は供給国が米国、カナダ、豪州などの先進国に多く、また先進国以外にもインドネシア、ロシア、コロンビア、中国などでも産出する。石油輸出国機構のような組織もなく、オイルショック以降、常に石油より安く供給されてきた。競争力のある石炭を利用している発電所はどの国でも最も価格競争力がある。石炭火力あるいは燃料費の不要な水力より原子力が高いのは当たり前の話だ。
しかし、一つの燃料に依存するのはリスクがあるので、どの国もコストが高くても石油を利用したり、あるいは、天然ガスを利用している。原子力もリスク分散の一つだ。誤解を招く小見出しをつけるより、もっと取り上げるべきことがあるのではないだろうか。低コスト神話が揺らいでいると主張したいがために正確に情報を伝えない姿勢はメディアとして許されないのではないか。
河野太郎の脱原発論の巧妙な嘘
文藝春秋で脱原発論を展開したのが、河野太郎だ。主張は、再生可能エネルギーで脱原発は可能ということにあり、その例として脱原発を宣言したドイツは太陽光、風力の再エネによる発電が増え、電力輸出も増えていると主張している。そのため、フランスからの原発の電気があるからドイツは脱原発が可能といえばドイツ人は怒ると主張している。
この主張は間違いだ。13年1月から9月のドイツの風力と太陽光による発電量と12年同期との比較が図-1に示されている。天候により月毎の発電量は大きく変動しているが、13年の風力の発電量は月平均20億kW時程度増えている。一方、同期間のドイツの電力の輸出入量を図-2に示している。輸出量はごく僅か増加しているが、殆ど変化はない。河野の主張とは異なっている。