2024年4月23日(火)

World Energy Watch

2014年2月12日

 需要がない時には、なかなか電気は売れない。12年を通しては、冬場の夜間を中心に風が強いが電力需要がない時70時間は、お金を付けなければ周辺国は電気を引き取らなかった。需要に合わせて発電できない再エネの電気を発電事業者も持て余すという話だ。河野の説明は全く正確ではない。コストの高い再エネの電気を安く売れば損をする。その差額は電気の需要者が負担するしかない。電気料金をさらに押し上げることになる。

数字も入れ替えてしまう河野の説明

 話の背景説明に加え、河野は数字も入れ替えてしまっている。河野がブログで取り上げた再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の買い取り価格の話だ。消費者負担額は、再エネによって発電された電気の買い取り価格から、その発電により電力会社が節約できるコストを引き計算することになっている。この節約できるコストは電力会社が保有する全発電設備の平均コストになっている。

 全電源平均コストを使用するのは間違いとしたのは、河野が引用した自然エネルギー財団のレポートだ。電力会社は先ず最もコストの高い石油火力あるいは卸電力の購入を止める筈だから、全電源平均コストではなく、石油火力あるいは卸電力の価格、約16円を使うべきとしている。

この主張は間違いだ。なぜなら、わずか0.5%のシェアしかない卸電力を使っている時、あるいはコストが高いために稼働率が低い石油火力を使っている時に、再エネから発電されることは少ないからだ。再エネからの発電がある時に使用しているのは、天然ガス火力あるいは石炭火力だろう。そうすると止めるのはガスあるいは石炭となり、石油、卸電力と比較するとコストは随分低くなる。

 結局全電源平均コスト程度になるだろう。河野は自然財団が主張する石油火力、卸電力のコストが該当する可能性は少ないと知っていたのではないだろうか。河野は火力8円、水力2円、全電源平均コスト5円と数字を入れ替えて説明している。発電の大部分を火力で行っていることも河野は知らないのだろうか、それとも加重平均という考えをしらないのだろうか。コストが大きく異なる火力のなかを分類せずに、実体を全く反映しない数字を作って間違っていると主張するのは、フェアではない。

再エネ導入には原子力が必要

 朝日新聞も河野太郎も脱原発・再エネ推進の立場だ。しかし、実は再エネ推進は原発がないと難しい。再エネの比率が増えてくれば、再エネが発電できない時にバックアップで利用される天然ガスなどの火力の設備が必要になるが、その設備の稼働率は再エネの量が増えれば段々低下し、結果採算が悪化し、維持が困難になる。今再エネが増えている欧州で起こっている事態だ。

 再エネの導入量を増やし、コストの上昇するバックアップ設備を維持するためには、常に安価に発電できる電源が必要だ。再エネが安定的に安価に発電できるようになるまでには、まだ相当時間がかかる。その間、再エネとバックアップ電源というコストの高い方法で乗り切るしかない。そのコストアップを補うのは安価な発電方式だ。シェール革命の米国は競争力のある天然ガス火力を活用できるかもしれない。しかし、多くの国は原子力を利用するしかないだろう。再エネを推進するために、無理やり原子力を悪者にすると、再エネの導入にも齟齬をきたすことを考えるべきだ。

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