電力の輸出量は需給関係で決まる。電気は貯めることができないので、需要があれば必ず発電し供給しなければいけない。一方、電気は捨てることができないので、需要がなければ、発電はできない。再エネから発電がある時に周辺国で需要がなければ、需給関係から電力価格はどんどん下がり、輸出すれば赤字になる。このため需要がない時に再エネからの発電があれば、水力、火力などの発電設備を止め、供給量を調整する。再エネからの発電量が増えても輸出量が増えるとは限らない。
もっと、ひどい間違いはフランスからの電力供給だ。フランスからドイツへの電力輸出量を図-3に示した。ドイツはフランスの電力に頼っている。それは、電気が必要な時に発電できるとは限らない再エネからの電気が当てにならないことに加え、風力発電設備が風の強い北部に位置しており、原発を既に5基停止している南部に電気を送るための送電能力が不足しているためだ。このため、ドイツ南部はフランスの原発主体の電気がなければ停電する。
燃料費が不要な再エネの電気は
引き取り手がいっぱい?
また、河野はこうも言っている。「日中燃料代の不要なドイツの太陽光からの発電が増えれば、周辺国は自国の発電設備を止めて電気を輸入する」。電気に色はなく、何から発電されたかは分からないのに、燃料代不要な太陽光の電気だから輸入するというのは不思議な説明だ。燃料を使わなくても設備費が高い太陽光の発電コストは高い。わざわざ自国の発電設備を止めてコストの高い電気を買うのだろうか。
実は、そういうことはあるのだ。燃料代が不要だから周辺国が買うのではなく、卸市場での電気料金が安くなるから、買うことがある。天候次第で発電量が決まる再エネの電気は需要に合わせて発電することはできない。冷暖房需要がない晴天の休日、あるいは風の強い冬の夜中には発電しても電力需要はない。でも、電気は捨てられない。
そうなると、兎に角市場で売るしかない。周辺諸国は輸入するためには自国の発電設備を止めることになるが、止めても節約できるのは燃料代だけだ。固定費など他のコストは必要になる。そのため、そのコストも考えたうえで、止めて輸入するかどうかの判断をすることになる。