2024年12月18日(水)

令和のクマ騒動が人間に問うていること

2024年12月18日

Hunter5
野生動物保護管理事務所
大西勝博さん

テキサス州で、友人とBBQを楽しむ大西さん。服装からも米国西部文化の雰囲気がよく伝わってくる(MASAHIRO ONISI)

 「私が教えていた大学のクラスでは、3歳の時にはじめてシカを撃ったという女性がいました。5歳以下でシカを撃った経験があるという人が30人の中で5人ほどいました。銃による事件が絶えない中で、そのマイナス面が大きいことは確かですが、一方で、日本に比べてアメリカには狩猟文化が根付いています」

 そう教えてくれた野生動物保護管理事務所の大西勝博さん(42歳)は、米テキサス州サル・ロス州立大学とテキサスA&M大学キングズビル校で学び、ワイルドライフマネジメント(野生動物管理)の博士号を持つ。狩猟免許の資格も持つ大西さんは、狩猟歴12年で、狩猟のインストラクターもしていたという。

 「テキサス州だけでも、ワイルドライフマネジメントを学ぶことができる大学は10以上ありました。そこで学んだ専門家は、州政府や連邦政府が専門官として雇用してくれます。日本でワイルドライフマネジメントを学ぶことができる大学が少ないのは、出口の問題が大きく影響していると思います」

 狩猟文化が根付いているからこそ、野生動物という資源を持続的に活用するための管理が必要であり、そのための税金投入についても国民の理解が得られているのだろう。

 それだけではない。例えば、全米の公立大学100校が連携して子ども・若者たち約600万人に教育プログラムを提供する「4−H」という組織がある。これに所属するウィスコンシン大学マディソン校では狩猟教育のプログラムを提供している。「野生動物の保護や狩猟についてもっと知りたいなら、このプロジェクトはあなたにぴったりです。このプロジェクトでは、狩猟鳥類や動物を識別、追跡、特徴づける方法、安全で合法的な狩猟者になる方法、生息地を保護し改善する方法、剥製術の基本概念を学ぶことができます」とのことだ。

 「州にもよりますが、アメリカでは狩猟圧が強い状況にあり、それが一部の鳥獣害を防ぐことにもつながっていると思います。日本の場合、ハンターも減る中で、野生動物の管理について子どもの授業に取り入れることで、野生動物の需要度も高まると思います」

Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。
Wedge 2024年12月号より
令和のクマ騒動が人間に問うていること
令和のクマ騒動が人間に問うていること

全国でクマの出没が相次ぎ、メディアの報道も過熱している。 しかし、クマが出没する根本的な原因を見落としていないだろうか。人間はいかに自然と向き合い、野生動物とどう生きていくべきか。人口減少社会を迎える中、我々に必要とされる新たな観点を示す。


新着記事

»もっと見る