Hunter4
北海道羅臼町産業創生課
田澤道広さん
「ウクライナとロシアの戦争で、猟銃に使用する弾丸の価格も1.5倍になりました。クマ(ヒグマ)を撃つには、市販の弾丸では精度が不十分なことが多いのです。ですので、弾頭、薬莢、そして火薬量を自分で調整する必要があります。そうして弾丸をつくった後は、射撃場に行って試射して、これで大丈夫というものを実際の現場で使用するのです」
そう話してくれたのは羅臼町産業創生課の田澤道広さん(65歳)だ。田澤さんは、行政職員だが、個人として猟銃免許を持っている。
「羅臼は山、家並み、海が細長く3列に並んでいて、他の地域に比べて緩衝帯が少ないという特徴があります。ですので、住宅地域や、海岸にクマが出てくることが珍しくありません。特に海岸は、羅臼にとって重要な場所です。名産品の『羅臼昆布』は、夏の間、一家総出で漁業番屋に居住場所を移し、23にも上る工程を経てつくられます。そんな昆布小屋にもクマが出てくるのです」
昨年、羅臼町が捕獲したクマの頭数は73頭にもおよぶ。うち3分の1強は田澤さんが捕獲したものだ。
「これだけの数は、初めてです。猟友会のハンターに頼まなくても可能な状況では、私が直接対応にあたることも少なくありません。市街地にクマが出て発砲する場合、警察官職務執行法によって、警察官の許可が必要です。しかし、緊急性を要するときは、時間がかかってしまうので、警察官の許可がなくても、猟銃を使用することができるように法改正が議論されています」
ただし、市街地で発砲して人身や建物に被害が出たときの責任は誰が負うかなど、残された課題は多い。
ハンターの数が減っていく中で、田澤さんのような「ガバメントハンター」を養成していくことも必要だが、それだけの予算の余裕が自治体にあるかといえば簡単ではない。現状の田澤さんは、猟銃、弾丸の費用は自らの持ち出しでガバメントハンターとしての役割を担っている。もちろん公務員なので、報奨金をもらうこともできない。