2025年1月6日(月)

Wedge OPINION

2025年1月2日

 竹下登内閣当時の1989年春、戦後最大の疑獄事件のひとつに数えられたリクルート事件で政局は大荒れ。首相自身の疑惑に加え、野党が要求する証人喚問問題などをめぐって国会はしばしば空転、竹下首相の支持率も10%程度まで低迷した。新年度に入っても予算成立のめどが立たなかった。

 暫定予算の補正などといった前代未聞の事態も生じたが、竹下首相が退陣を表明して事態を打開、ようやく成立にこぎつけた。

 〝総主流派体制〟といわれる安定した政局運営で、長年の懸案、牛肉・オレンジの自由化という大技をみせた強力内閣ですら、あっけなく瓦解してしまった。

都議選、参院選連敗で総辞職した宇野内閣

 混迷を極めた末、竹下後継として6月の両院議員総会で宇野宗佑外相(当時)が指名されたが、リクルート事件はなお尾を引き、悪いことに宇野新首相の女性スキャンダルも明るみにでて、7月2日投票の都議選では自民党は改選前より20議席を失う敗北。

 3週間後に行われた参院選で宇野自民党は、あろうことか改選議席69議席から一気に33議席失う36議席にとどまる無残な敗北を喫した。宇野首相は直ちに退陣を表明、在任わずか69日だった。

 奇しくも、ことし夏は都議選、参院選が予定されている。

 政治資金パーティの収入をめぐる裏金疑惑はなお尾をひいているし、この問題で処分を強行した首相への怨念が少なからず残っている。石破氏自身の不人気はなお上昇の気配が見ええない。 首相は新年度予算を成立させたあと、与野党で主張に隔たりのある企業・団体献金の問題など重要課題に決着をつけ反転攻勢に出たいところだろう。

 企業・団体献金について与野党は来年3月までに結論を出すことで一致しているが、禁止を求める野党と存続を主張する自民党は、どう折り合いをつけるのか。予算審議大詰めの時期と一致するため、野党が予算案を〝人質〟にとることも予想される。

 首相は24年暮れの講演やメディアのインタビューで、予算案が否決された場合、衆院の解散があると言明、野党をけん制した。首相自身の危機感の表れだろう。

予算成立後に〝石破おろし〟も

 仮に献金問題で与野党が合意、予算が成立したとしても、首相は安心できない。「予算があがるまでは総裁を支える暗黙の合意があるが、その後はどうなるか」(自民党大臣経験者)などという不穏な予測も少なくない。

 首相は24年秋、臨時国会の所信表明演説で、外交問題を冒頭に語るという奇策にでた。内政での不出来を外交でカバーするという思惑だろう。

 しかし、秋の一連の外遊で、外交下手を露呈したのは記憶に新しい。ペルーでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、わざわざ、あいさつに来てくれたカナダのトルドー首相に、座ったまま握手したとか、首脳の集合記念写真に間に合わなかったとかいう話を聞くにつけ、不安に感じる向きも少なくないだろう。


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