2025年1月9日(木)

「最後の暗黒大陸」物流の〝今〟

2025年1月7日

日本の11型パレットの近未来の展望

 日本や韓国では11型パレットが長年多数派であったこともあり、また先述の通り、21世紀初頭に中国が11型パレットを標準パレットのひとつとしたことから、11型パレットがアジアでは標準パレットになるという見方があったことも事実であろう。

 しかしながら、ここまで述べてきた通り、一国では世界最大のパレット市場である米国では、1200mm×1000mm型とほぼ同サイズの48インチ×40インチ(1219mm×1016mm)型が中心である。また、世界最大のパレット保有地域である欧州では、1200mm×800mm型と1200mm×1000mm型を併用しつつ後者に漸次中心が移行しつつある。そして、アジア最大のパレット市場である中国でも、1200mm×1000mm型を中心とする欧米型パレットが中心となりつつある。

 日本で最も多く生産され、かつ物流施設で最も多く利用されているパレットが11型であることに鑑み、現時点において11型パレットを日本の標準パレットとしたことは、ある意味正しい判断であったと思われる。しかしながら、欧米や中国で進行しているトレンドを考慮すると、中長期的には、11型パレットを恒久的な標準パレットとし続けることが難しくなっていくと考えるのは、筆者だけではないであろう。

 日本では、産官学の有識者で構成される「フィジカルインターネット実現会議」が21年に発足し、インターネット通信の仕組みを物流に応用し、複数の企業が保有する倉庫やトラックといった物流資産を共有することで、物流全体の効率化を検討している。40年の“日本型”フィジカルインターネット実現を目指して、様々な取り組みが行われているが、この“日本型”は要注意ではなかろうか。

 フィジカルインターネットの物理的なオペレーションで最も重要なモジュラー式コンテナ(以降、PIコンテナ)の最大サイズは、幅2.4メートル、高さ2.4メートル、長さ12メートルという国際標準化機構(ISO)コンテナとほぼ一致するサイズを想定している。その下にこの3つの数値の約数のより小さな複数タイプのPIコンテナが想定されている。欧米型のパレットのサイズが、この3つの数値の約数と合致していることには注目すべきである。

 日本において、独自の10トントラックや31フィートコンテナ、PIコンテナのサイズと合致しない11型パレットの利用を前提とした取り組みが中長期的に推進された場合、グローバルなメガトレンドとしてのフィジカルインターネットとは全く異なるものができ上がってしまうのではなかろうか。これは、携帯電話のiモードのような道をたどりかねない。

 日本国内のサプライチェーンに対応するに最適なPIコンテナができたとしても、日本製品の輸出先の国や地域でグローバル標準のPIコンテナに詰め替えなければならないのでは、日本の国際競争力を阻害することになる。また、グローバル標準のPIコンテナに梱包されてきた海外製品を、輸入後に“日本型”PIコンテナに詰め替えなければならないとすれば、物流コストの最適化を阻害することになる。

 結局のところ、このグローバルなフィジカルインターネットの時代において、日本の荷主企業も物流企業も、グローバルな標準化のトレンドを受け入れ、日本の物流を根幹から変えることを恐れず、中長期的に1200mm×1000mm型を中心とする欧米型パレットを標準としていく方向づけが不可欠であろう。

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