2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年3月6日

 王金平立法院長が示唆するように、政府は両岸対話を進める前に、立法院に方針を報告し、また立法院は合意事項が署名される前に、その内容を見直す機会をもつべきである。台湾の人たちは大衆の論議を通じて、中台間の接近をより広く監視すべきである、と述べています。

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 台湾では中台間で署名されたサービス貿易協定に関する立法院での審議が遅々として進んでいません。そのような状況下で台湾当局の大陸委員会主任が訪中し、中国側カウンターパートと会談することが発表されたのを受け、同主任訪中にあたり立法院が決議を採択し注文をつけたことを、台北タイムズが取り上げたものです。

 三権が分立している台湾の政治制度下において、行政院(内閣)の行うことに立法院がどこまで介入できるかという法的拘束力については、議論の余地があります。にもかかわらず、このような決議が採択されたという事実は、少なからぬ政治的意味合いを持っていると考えてよいでしょう。

 中台間ではECFAが締結され、経済的、人的往来の面でその距離は一段と近くなりました。しかし、他方、台湾への中国の政治的影響力がますます増大するのではないかとの懸念を台湾の多数の人たちが抱き始めています。

 今回の立法院の決議内容は、中国側が台湾側を政治協議の場に誘い込むことを牽制したものです。特にそれは「一つの中国の枠組み」、「中国と台湾は地域と地域の関係」というような法的概念の分野、軍事的信頼醸成措置など米国の「台湾関係法」に関わる分野などに跨っています。

 実際に行われた初の中台閣僚級会談では、そうした内容に踏み込むことはありませんでした。今回の立法院決議に代表される台湾の民意がそういうことを許さなかった、という側面は大きいと思います。

 今後の注目点の一つは、馬総統・習主席の間の会談が、本年のAPECの上海総会の際に行われるか否かです。中国側は、国家を代表する総統としてではなく、国民党主席としての馬英九と会談する用意があることを示唆しているようです。馬英九としては、11%に低迷している支持率でこのような会談を行うことが、本年末の地方選挙、2016年始めの総統選挙にいかなるマイナス効果を及ぼすかを真剣に考慮せざるを得ない状況にあると思われます。

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