2024年4月20日(土)

オトナの教養 週末の一冊

2014年2月28日

 たとえば、パロマのケースでは、修理業者が不正改造をすることで一酸化炭素中毒事故が相次いだのであるから、その再発防止のためにメーカーとしては、修理業者への指導、消費者への注意喚起といった「情報提供」に関してやれることはいろいろあったはずである、という。

 <それを十分に行っていなかったことについて、パロマ側に法的責任があるか否かは別として、社会的責任の観点から、メーカーとして真摯に反省する姿勢を見せていれば、事故に関する問題の焦点は、製品の欠陥ではなく、不正改造の方に向かっていたはずだ。>

 事実、パロマが設置した第三者委員会の報告書は、製品の欠陥を否定した上で、パロマが一斉点検、消費者への周知などの措置をとっていれば事故を防止できたことなどを指摘している。しかし、「世の中のパロマ問題に対する見方は固まっており、それを覆すことはできなかった」。

 現在では修理業者による不正改造の危険性はほぼなくなっていると考えられるにも関わらず、一台残らず回収するまで、パロマの製品回収は続けられるという。消費者の安全を守るという本質からは、ずれた対応では? と首をかしげざるを得ない。

コンプライアンスとは
「社会的要請に応えること」

 コンプライアンスとは、「法令遵守」ではなく、「社会的要請に応えること」と著者は語る。本書に掲げられている事例分析をみても、企業はいまや、法令を遵守すればよいだけではなく、社会の要請を敏感にくみとり、真摯に応える努力をしなくては信頼されない、と痛感する。

 「社会の要請に対して企業がどのように応えようとしているのか、その姿勢について誤解を受けないようにすること、そして、生じている誤解を解消すること」こそ、危機対応の基本であろう。

 <企業が危機対応に失敗することで生じる誤解が、企業への不信を生み、不信を解消するための対応がさらなる誤解を生む、という誤解と不信の連鎖による「巨大不祥事」は、企業に大きなダメージを与えるだけではない。確実に社会の劣化を招く。>

 著者が警告するような「社会の劣化」へのスパイラルを断ち切るには、消費者一人ひとりがまずは「ことの本質」を知ろうとすることから始めないといけない、と感じた。


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