2024年11月26日(火)

オトナの教養 週末の一冊

2014年2月28日

「巨大不祥事」に発展したプロセスを検証

 先に挙げた最近の事例をタイムリーにとりあげ、「巨大不祥事」の本質に迫ったのが、本書である。

 著者は、検事を経て弁護士となった組織コンプライアンスの第一人者。不二家信頼回復対策会議議長など多数の企業・官公庁の第三者機関の仕事に関わり、組織の不祥事対応の現場で活躍しているという。2011年には、九州電力「やらせメール」問題の第三者委員会委員長も務めた。

 こうした経験から本書では、2013年に表面化した3つの企業不祥事などについて、「生じている誤解の中身を明らかにした上で、危機対応の失敗によってその誤解が拡大し、『巨大不祥事』に発展していったプロセスを具体的に検証する。そして、それらから得られる教訓も踏まえ、私自身が多くの不祥事対応に関わってきた経験に基づき、基本的な視点から、企業の危機対応の戦略について考えて」いる。

カネボウとパロマ
企業側の情報提供の問題

 科学ジャーナリストとして特に興味を引かれたのが、カネボウ化粧品の「白斑被害」問題と、パロマの湯沸かし器事故問題である。

 製品の客観的な安全性とは別のところで問題が大きくなった典型例ではないかと私は感じていたのだが、本書の分析を読み、我が意を得たり、であった。

 <企業が製造・供給している商品の品質・安全性に関して問題が指摘されるという典型的なタイプの不祥事に関して、対応方針と具体的方策を決定する上で重要なのは、「客観的な品質・安全性」の問題と「情報の提供」の問題とを区別し、整理して考えることである。>

 著者はこのように述べ、カネボウとパロマのケースは、科学的根拠に基づいて立証されるべき製品の品質・安全性の問題とは別に、その製品の品質・安全性に関する企業側の情報提供の問題があったと指摘する。


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