連邦政府の最高法執行官である司法長官に就任したのは、パム・ボンディ(59歳)だ。

トランプは当初、マット・ゲーツ前下院議員を指名したが、未成年の女性に金銭を支払って性的な関係を持った疑いなどで当局の捜査を受け、共和党内からも問題視する声が上がったことで、辞退。代わりに彼女が起用された。
ボンディは、フロリダ州の西海岸、メキシコ湾に面したタンパ湾沿いに位置する都市のタンパ出身だ。そこは、19世紀後半から20世紀初頭にかけて葉巻産業で繁栄し、キューバからの移民が多いことで知られる。
ボンディはフロリダ大学で刑事司法を専攻し、1987年に学士号を取得。その後、ステットソン大学法科大学院で法務博士号を取得し、91年にフロリダ州弁護士会に登録された。検察官を務めた約18年もの間、家庭内暴力から殺人事件に至るまで幅広い事件を担当した。
2010年にフロリダ州司法長官選挙に出馬し、共和党予備選で勝利した後、民主党候補のダン・ゲルバーを破って当選。11年にフロリダ州初の女性司法長官となった。在任中、強力な医療用オピオイド(麻薬性鎮痛薬)の一種で、中~重度の痛みを緩和するために使用される医薬品オキシコドンの違法処方を行うクリニックの取り締まりに注力し、全米で問題視されていた薬物乱用対策で成果を上げた。また、同性婚の合法化にも反対した。
トランプへの忠誠心が如実に分かる試金石となったのは、20年にトランプが上院で弾劾訴追されたときに、チーム・トランプの弁護士を務め、さらに20年の大統領選挙後、トランプの「選挙に不正があった」という主張を全面支持したことだ。
物議を醸したのが13年、トランプ財団から彼女の政治活動委員会に2万5000ドルの寄付が行われた後、トランプ大学の不正調査を行わないと決定したことだ。ボンディは今年1月の上院の指名承認公聴会で、「国の最高連邦法執行官としての意思決定に政治は関係ない」と述べたが、トランプの敵対者に対する捜査の可能性については否定しなかった。最終的に2月4日、上院で54対46の票差で承認された。
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ロビイストとしても大活躍
ボンディは最初からトランプの忠実な支持者だったわけではない。フロリダ州がこの8年間右派政治の発祥地となり、共和党が強固な州になるにつれ、それに歩調を合わせるかのようにトランプに忠実になっていった。つまり、彼女は共和党がフロリダ州にとって重要な瞬間に差し掛かっていることを見抜いていたということである。その先見の明があったからこそ、トランプは彼女を抜擢した。直近では、トランプが2期目の大統領に当選した暁に、1期目のような混乱が生じないように政策や人事について準備していたAmerica First Policy Institute(アメリカ・ファースト政策研究所)の会長を務めていた。