ボンディは19年にフロリダ州司法長官の職を離れた後、首都のワシントンに拠点を置くロビイング会社「Ballard Partners」にパートナーとして参加し、企業や外国政府のロビイストとして活動した。彼女がロビイング活動をしていた有名な企業は、アマゾンやウーバー、GMで、外国政府はカタール政府だ。19年にカタール政府のロビイストとして登録し、月額11万5000ドルの報酬を得た。また、クウェートに拠点を置く会社「KGL Investment」のロビイング活動もしていたが、その内容が完全に開示されていないので、連邦政府の最高法執行官としての職務において、潜在的な利益相反の懸念が指摘されている。
ボンディは就任初日に米連邦捜査局(FBI)の外国影響タスクフォースや司法省が22年に設置したTask Force KleptoCaptureを解散した。これはロシアによるウクライナ侵攻直後、司法省がロシアのオリガルヒ(新興財閥)やプーチン政権に近い人物の資産を追跡・押収・凍結するために設立されたチームである。これだけみても司法省が劇的とも言える変化を遂げていることが分かるだろう。
さらに司法省の「パブリック・インテグリティ部門(通称PIN)」も実質的に解体された。これは、ウォーターゲート事件後の1976年に設立され、連邦・州・地方の公職者による汚職や選挙犯罪の捜査・起訴を担当してきた重要な部署だった。PINは、政治的動機による起訴を防ぐための制度的なチェック機能を果たしていたが、それが失われることで、法の公正な執行が損なわれる可能性があるといわれている。
さらに、ボンディはトランプ政権の政策に反対する連邦判事に対して攻撃的な姿勢を示し、司法の独立性への懸念が高まっている。まさにトランプのアジェンダであるMAGA的大改革を後押ししている。
評価が分かれる
テレジェニックな政治家
一方で、20年前にボンディと交際していた弁護士のビリー・ハワードは「彼女は、法廷で力を発揮したため、私は彼女に≪パミネーター≫というあだ名をつけた」と言う。それほど、タフで強烈な性格であるという意味だ。また、ボンディをよく知る人物の一人で、2011年から17年までアラバマ州司法長官を、17年から18年までアラバマ州選出の連邦上院議員を務めたルーサー・ストレンジは、こう語る。
「彼女は人望が厚く、親身になってみんなと仕事をしていた。司法長官の持つ強大な権力を理解し、それを尊重する人にその役割を担ってもらいたいと思うだろう。ボンディはその役職にぴったりの人物である」
ボンディの評価は分かれるが、テレジェニックな政治家としてのキャリアを特徴づける魅力や洞察力、そして軽妙なタッチの組み合わせのおかげで、司法長官にまで出世したと言っても過言ではない。
米国は司法の独立性を守れるのか。ボンディの言動次第で、米国における日本企業の事業展開などにも影響を与える可能性がある。注視が必要だろう。
