2025年4月19日(土)

モノ語り。

2025年2月9日

「作り手は真の使い手であれ」

 「かまどさん」の取説の受け売りですが、火を消すまでの13分間、「かまどさん」は徐々に蓄熱をしています。だから「はじめちょろちょろ」で、次第に温度が上がって「中ぱっぱ」が起こります。そして、火を切った後も、100度近い蓄熱が30分程度続くので、薪の竈にできる熾(残り火)と同じく、「赤子泣いても蓋とるな」という「蒸らし」が行われているのです。

「かまどさん」のサイズは1合から5合炊きまである。写真は3合炊きのもの 

 「かまどさん」には、おいしさを閉じ込める「中蓋」も付いていますが、陶器だけに壊れるリスクもあります。

 「それで使うのをやめたというお客様もおられましたので、パーツ販売も開始しました。ただ、窯で焼く陶器は、置かれた場所によって収縮率が微妙に異なるため、お客様に蓋や鍋の直径を聞く必要があります」

 手間がかかるので、反対する意見もあったそうですが、大産地のように分業が進んでおらず、自社で一貫生産しているからこそできるサービスということで実施したところ、大好評になりました。こうした顧客第一の姿勢の背景には「作り手は真の使い手であれ」というこだわりがあるのです。

 また「食卓は遊びの広場だ」という精神のもと、「いぶしぎん」という土鍋燻製器も開発されています。康弘さんのご息女で広報・Web担当の早紋さんによれば「ベーコン鍋を食卓で囲めば、大盛り上がりします」とのことで、早速試してみたいと思います。長谷園さんではゴールデンウイークに「窯出し市」というイベントを行っており、約3万人の来場があります。

 また、登り窯や、国の登録有形文化財の建物もあって年間では5万人もの観光客が訪れるそうです。決して便利な場所にあるわけではありませんが、行くだけの価値はある場所だと思います。500円で陶器付きコーヒーが飲めるので、お土産に最適です。

左から筆者の水代さん、長谷さん、早紋さん 
伊賀焼カップがもらえるコーヒーの販売機
バリエーション豊富な「かまどさん」
 
「かまどさん」で炊飯の準備をする筆者
簡単に炊き上がる
「やきやきさん」で調理する筆者。
伊賀焼窯元長谷園 三重県伊賀市丸柱569 0595-44-1511
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Wedge 2025年2月号より
災害大国を生きる 積み残された日本の宿題
災害大国を生きる 積み残された日本の宿題

「こういう運命だったと思うしかない」輪島市町野町に住んでいた小池宏さん(70歳)は小誌の取材にこう答えた。1月の地震で自宅は全壊。9月の豪雨災害時は自宅周辺一帯が湖のようになったという。能登半島地震から1年。現地では今もなお、土砂崩れによって山肌が見えたままの箇所があったほか、瓦礫で塞がれた道路や倒壊した家屋も多数残っていた。日本は今年で発災から30年を迎える阪神・淡路大震災や東日本大震災など、これまで幾多の自然災害を経験し、様々な教訓を得てきた。にもかかわらず、被災地では「繰り返される光景」がある。能登の現在地を記録するとともに、本格的な人口減少時代を迎える中、災害大国・日本の震災復興に必要な視点、改善すべき方向性を提示したい。


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