2024年4月26日(金)

解体 ロシア外交

2014年3月6日

 また、クリミア半島のセバストポリに黒海艦隊の不凍軍港があることも、ロシアがクリミアを手放せない大きな理由です。ヤヌコービッチ前大統領はロシアのこの軍港の使用を、天然ガス価格の割引と引き換えに、2045年まで延長しましたが、その前のユシチェンコ氏は親欧米派で、黒海艦隊の早期撤退を求め、2017年までと決められていた使用期間を延長しないと主張していました。今回また親欧米政権が誕生すれば、同様の事態も考えられます。

 ロシアとウクライナは双子のような関係と言っても過言ではなく、そのウクライナが親欧米化し、NATOやEUに入ってしまうという事態は、ロシアとしては絶対に許せないことなのです。

――ロシア国内の反応はどうでしょうか?

廣瀬:冒頭でも触れたように、ロシア・トゥデイのキャスターは、ロシアのメディア批判だけでなく明確に「ロシアがやっていることは間違っている」と非難しましたが、国民の反応は人によって様々、というところでしょう。ですが、やはりクリミアに関しては前述のような経緯から「もともとロシア」という感覚をもつ人が多いようです。

 また、今回のロシアの行動は、国内政策の一環としての面もあると思われます。ヤヌコービッチ前大統領は問題だらけでしたが、それでも「合法的」な選挙を経て大統領になったというれっきとした正当性がありました。他方、暫定政権は議会で必要な信任票を獲得しているので既に合法ではありますが、その暫定政権が生まれるに至ったクーデターは「非合法」的な手段であり、それによって政権が崩壊するということがロシアの隣で起きてしまっては、国内への影響が懸念されます。ただでさえ、ソチ五輪を前に政敵・ホドロコフスキーやプッシーライオットなど、政権にとっての危険分子を釈放していたため、見せしめとして、ウクライナに対して強く出ている側面もあるでしょう。

 なお、ウクライナの動向を静観した場合の影響については、国内的な懸念だけではなく、もちろん、国外、特に近隣諸国についても同じく危惧を強めていると思います。つまり、ウクライナのような流れが、冷戦末期の東欧革命のドミノのように、旧ソ連の他の諸国に広がることを何としても防ぎたいとも思っているはずです。

――西側諸国は一枚岩となって、ロシアを孤立化させようとしていますが、なかなかうまくいっていないようです。

廣瀬:残念ながら腰抜け、という印象を受けます。もともとオバマ大統領はこれまでの国内外の政策の失敗でボロボロですし、仮にロシアとウクライナで戦争が勃発したときにNATOも絶対に参戦したくない、というのが本音でしょう。コソボ紛争を繰り返したくないわけです。コソボはセルビアが相手でしたが、今回は大国・ロシアが相手です。NATOはもちろんロシアをずっと仮想敵国と見なしてきましたが、実際に戦争となると恐ろしいことに違いはありません。


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