2024年11月22日(金)

ベテラン経済記者の眼

2014年3月10日

 日米の対立に加えて、交渉全体を俯瞰した書き方をしていたのが日経だった。日経は交渉が停滞した背景について、新興国も含めた多くの参加国が妥協しなかった点に言及。交渉の先行きが混沌としてきた状況を指摘した。そのうえでこれまで早期妥結を目標としてきた機運は低下し、時間をかけて各国が主張を展開する方向になりつつあることに言及した。

ドーハラウンドの二の舞か

 多くの通商交渉に共通していえることだが、合意に至るプロセスは秘密のベールに包まれており、交渉の全体像は外部にはわからない。現場で取材に奮闘する記者がつかむ情報の断片を積み重ねてゆくことで、少しずつ輪郭が浮かび上がってくるのが常だ。

 TPPは昨年末までに大筋で合意しようという目標でやってきたものの不首尾に終わった。今回大筋合意を得るべく交渉の進展に期待がかかったが、結局合意には至らなかった。全体状況をみると、展望は立っておらず、これからも早期に合意に達するのは難しいのが実情だ。これはどこかで見た状況に似ているなと思ったが、世界貿易機関(WTO)が進める新多角的貿易交渉(ドーハラウンド)のように「宙づり」になってしまっている。

 期待をかけるとするならば、4月のオバマ大統領の来日までの動きが次の焦点になるのだろう。ここまでに動きを得られないのであればTPP交渉は長期化が決定的になる。朝日新聞は「長引けば経済政策に影」との見出しで解説を載せ、もはや交渉の期限を設ける意味はなく、再び越年する可能性にする見方が早くも浮上していると指摘した。日経は編集委員のコラムで「近づく政治決断の時」と日米双方の政治的な決断を促した。交渉をまとめるにはどこかで決断が必要だ。メディアはこれまでの長い時間をかけた交渉を無駄に終わらせないためにも、いまこそ腰の重い政府の背中を押す役割を果たさなければならないと強く思う。


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