馬英九総統が、TPPその他の貿易自由化に関して、蕭万長前副総統にリーダーシップをとらせようとしていることにつき、1月7日付ウォールストリート・ジャーナル紙が、好意的な社説を掲載しています。
すなわち、台湾の馬英九総統は、新年のスピーチで、TPPその他の貿易交渉を含む、地域的経済統合を専門とする特別委員会を作る、と言った。馬総統は、蕭万長前副総統に、ビジネス界の指導者、学者、政治家たちを統率するよう促し、真剣さを示した。蕭氏は、最近ワシントンを訪問し、貿易自由化および米国との紐帯の緊密化についての緊急声明を発した。
11月に蕭氏はブルッキングス研究所で、「台湾と外界の経済的関係は、中国との経済統合に強く偏っており、他の国々とは疎遠に向かっている」と言っている。また、同氏は、「台湾経済が“周辺化”されるリスクは、台湾経済の展望への信頼を損ね、台湾への内外の投資に水を差すことになる」
目下の懸念は、中台関係の悪化ではなく、中国本土の経済の鈍化や政治的危機の悪影響である。ECFA(両岸経済協力枠組み協定)が結ばれた2010年には、台湾の輸出の29%が中国本土向けだったが、今や、40%を占めている。また、台湾の対外投資の80%が対中国である。
ブルッキングスでの講演で、蕭氏は、米台の経済的つながりが弱まっていることを、以下のように、データを挙げて示した。2008年以前は、米国のGDPが1%上がれば台湾の輸出は6%伸びたが、今では米台の結びつきの重要性は低下しており、中国のGDPが1%上がれば台湾の輸出は3.8%伸びることになろう。彼は、台湾が中国への経済的依存を制限しなければ、台北は、対外関係において選択肢の幅を大きく狭められ、それは、ワシントンにとっても戦略的影響があろう、と警告している。
「TPPは、台湾に、対外的経済関係を多様化しリバランスする、意味のある機会を与えてくれる」と、蕭氏は言っている。台湾の悪名高い関税と官僚主義に関しては、蕭氏は、「台湾は、経済を自由化し、TPPの高い水準を満たす、政治的意思と能力がある」と約束し、その証拠として、2002年のWTO加盟、中国への(経済的)開放、最近のNZおよびシンガポールとのFTPを挙げた。
蕭氏は、また、米国産牛肉の輸入をめぐる長年の論争の解決も例に挙げたが、残念ながら、この例は、あまり良い例ではないかもしれない。確かに、台湾による米国産牛肉の輸入凍結は、5年の交渉を経て、昨年妥結したが、台湾は、特定の種類の米国産牛肉をいまだに輸入しようとしていないし、台湾の高官は、牛肉についての妥協が、米国産豚肉に拡大されることはないであろう、と言っている。