中国において、独裁体制を確立するためには、何よりも軍を掌握しなければなりません。論説は、前任者胡錦濤の場合と比較して、習近平が軍を急速に掌握していると観察し、人民解放軍の組織構造の近代化を推進しようとしていることを指摘しています。
人民解放軍の組織近代化は、末端による冒険主義的行動に由来する偶発的事態の可能性を低下させるかもしれませんが、他方、対外強硬派が多いと目されている軍人を従わせ、軍の改革を推進するには、彼らの意向を尊重する必要があると思われ、中国の攻撃的態度自体は、当面軟化することはないでしょう。
その後、国家安全委員会と近代化された軍という、二つの強大な治安当局を掌握した後、習近平体制がどの方向に向かうかは全く未知数です。
最も楽観的な見方、つまり希望的観測をすれば、独裁権力が確立して権力闘争の必要が無くなれば、「寧左勿右(強硬をもって良しとする)」という、強硬姿勢ばかりに迎合する必要も無くなって、柔軟姿勢も期待し得るかもしれません。ベリヤを粛清した後、フルシチョフがスターリン批判をした例もあります。しかし逆に、反党分子を粛清した後、キューバ危機のような冒険主義に走った例もあります。
今のところ、習の独裁体制がどの方向を志向するかは全く分かりません。しばらくは、警戒を怠ることなく、習近平独裁体制の動向を見守る以外にないのでしょう。
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