2024年12月3日(火)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年3月31日

 中国の国防費の増加が止まらない。3月13日、中国全国人民代表大会が閉幕した。今年の全人代に合わせて公表された2014年の中国国防予算は、前年実績比12.2%増の8082億3000万元(約13兆4400億円)で、4年連続の2桁の伸びとなった。中国国防費の急速な伸びは、周辺諸国が中国の軍事的意図に対して警戒感を有する理由の一つとなっている。

習近平自ら「党中央と中央軍事委に従え」

 さらに、人民解放軍の改革を進める意志が明確にされた。全人代閉幕後の15日に開かれた第一回「中央軍事委国防・軍隊改革深化指導小組」である。トップである組長は習近平国家主席だ。習主席は講話の中で、「思想・行動を党中央と中央軍事委の決定や指示に統一させ、強軍目標を掲げて改革を推進せよ」と強調した。主席自ら「党中央と中央軍事委に従え」と強調しなければならなかったのは、実際にはそうではないことを示唆している。

 そして、今回の全人代では、空軍が元気だったと聞く。会議後の記者のぶら下がり取材に対して積極的に答え、威勢の良い発言を繰り返したのだ。海軍も勢いがあったが、空軍の勢いはそれ以上だった。これは、これまで見られなかった光景だ。

 2桁の国防費増加を見せ、習近平主席への集権化を加速して改革を進め、海空軍が自らの主張を積極的に公にする。こうした動きは、一見、中国が対外的な軍事力行使を近い将来に企図しているかのようだ。実際のところ、中国人民解放軍に何が起こっているというのだろうか。習近平主席は、人民解放軍をどうしたいと思っているのか。米軍の4年ごとの戦略見直しであるQDR2014でも、中国軍が近代化を進める意図について懸念を示している。

改革推進の担い手は政府から党へ

 閉幕したばかりの中国全人代は、予算を含む指導部の政策を承認するのが主たる仕事である。この場で新たな国家戦略や方針が示される訳ではないが、中国指導部が、どのような政策を用いて国家戦略を具現化するのかを見る良い機会ではある。

 一方で、国家戦略を決めるのは5年に一度開催される党大会である。中国が進むべき方向を決めるのは政府の役割ではないのだ。2013年11月に開かれた中国共産党全国代表大会(18期三中全会)は、「改革」を強調するものだった。閉幕当日の11月12日には、「改革の全面的深化における若干の重大な問題に関する党中央の決定」を採択し、同日夕刻に発表された公報(コミュニケ)では「全面深化改革領導小組」と「国家安全委員会」の設置が明らかにされた。二つの新組織のトップは、習近平主席である。


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