11月19日付仏ル・モンド紙に、フランスの中国研究家Marie Holzman女史と中国の亡命反体制派である魏京生氏が、三中全会を機会に連名で論説を寄せ、中国は、鄧小平時代と変わらず、経済改革のみを求め、政治改革は一向に進まないので、国内の社会不安は止まないだろう、と述べています。
すなわち、11月9日から12日、中国共産党中央委員会が開催されたが、習近平主席の「労働報告」の中には、矛盾する文章も含まれていた。例えば、「資源の配分には、市場機能が不可欠である」と述べながら、「我々は、集団財産制度や国家主導経済に指導的役割を与えなければならない」と言っている。
結局は、「共産党の指導を維持すること」が必要だということだ。三中全会の主な成果は、党中央に直結する「国家安全委員会」という新組織を設立したことである。
これは、1978年に鄧小平が敷いた政策を継承したにすぎない。すなわち、経済改革をしながら、常により強硬な政治的圧力をかける政策である。
中国は既に、司法、国防、安全保障、警察、武装警察等の組織があるのに、何故、新組織を設立したのか。それは、党の指導部に、いつ国民の不満が爆発しないかの不安があるからである。それで、「安定維持」のためには、多額の資金をかける。
党指導部の中にも少数派ではあるが、真の政治改革を求める者はいる。1989年の胡耀邦の死は、この40年間で最も重要な民主主義を求める運動となった。その息子、胡徳平は、民主主義を求める象徴になっている。彼の仲間達は、富の再分配を開始する必要性を強調しつつ、胡錦濤が好んだ「中国流民主主義」ではなく、真の民主主義の基盤を築くことを求める。
が、政治改革実施の段階は既に過ぎてしまっているのかもしれない。中国人は、よく言う。「党を改革すれば党が潰れるが、党を改革しなければ国が潰れる」と。しかし、中国では欧州のような民主革命は起こらず、富裕層が生まれ、富裕層は既得権益を失うことを怖れ、貧困層は、その内に富裕層になることを望んでいる。
その間、2012年7月の「胡潤報告」によれば、中国人の富裕層の60%以上が既に移住しているか、そのための手続きを終えている。その内、85%以上の人が子女を外国の一流大学に留学させている。社会の分極化は拡大するばかりである。