2024年11月21日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年1月6日

 ただ、30年前と異なるのは、経済発展を背景に中国が推し進めてきた軍拡と、経済のグローバル化です。国内で人権弾圧をしながら、海外では自由の恩恵を他国以上に受けているのが中国ではないでしょうか。国際社会における一定の国際秩序を求める諸外国にとっては、非常に難しい相手です。

 上記論説の内容は、既に知られていることが多いですが、これを時として繰り返して指摘することには意味があります。そうしないと、中国側は実情を隠蔽し、外部世界では真実が見失われるからです。

 この論説も言うとおり、抜本的改革はもう手遅れかもしれません。支配階級の既得権がこれだけ積み重なっては、まさに「党を改革すれば党が潰れる」状況で、その意味では党主導の改革は不可能で、そうなると、「党を改革しなければ国が潰れる」ことになります。それで、最近は、「現体制は何時まで持つのでしょうか? 」という質問が多くなってきました。

 もちろんその答えは誰にも分かりませんが、改革は不可能であり何時かは崩壊する、しかし10年、20年は持つのであろうと考えます。その理由は、大企業は、その幹部が支配階級であるために、政府が無制限に融資するので破綻するということはあり得ません。そういう不効率な金融、投資が永く続けば、物価が上昇し庶民の暮らしは厳しくなりますが、世界最強の治安能力がそれを抑えます。また、経済的にも、まだ低賃金の労働力や政府の支援などによる若干の比較優位はあり、また、膨大な外貨の蓄積がゆとりとなっています。

 自発的な変革は無理で、体制の変革は最終的には反政府運動や暴動によるとすれば、治安能力は決定的な力を持ちます。北朝鮮の金正日の政権が、何百万人の餓死者を出しながら、無事に次世代まで継承し、本人が畳の上で死に得たのはその治安能力の故です。今回の三中全会の最大の効果は、それは治安能力の強化であったとも言えます。

 では、その間日本はどう付き合えば良いのでしょうか。中国としても、体制の存続を脅かさない限りの、経済自由化や、投資の誘致は必要であり、その限られた範囲内で付き合って行けばよいのだろうと思います。

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