0から1の数字で社会の不平等を示すジニ係数では、全ての数字が0.4以上になると社会暴動が起きる前兆とされる。2012年末以来、中国の値は既に0.5近くなっていると言われ、もしそれを信じるならば、全国的社会暴動の日は遠くないだろう。憶万長者や党幹部の恐怖は、ここから来るのである。
三中全会直前に終身刑の判決を受けた薄煕来は、反面教師の例である。彼は、武力に訴えることをしなかったが、彼に続く者は、逮捕され罪人にされる前に、武力に訴えるかもしれない。
実際、幹部の財産の詳細情報が流れるようになり、非難の声も聞かれるようになった。ブルームバーグ・ニュースは、6月、習近平一族の資産は、5億ドル以上あると試算し、ニューヨーク・タイムズ紙も10月に調査を行ない、温家宝一族の資産は、「少なくとも27億ドル」あると報じた。この二つのメディアの英語と中国語のサイトは、現在完全にブロックされている。
汚職や縁故びいきの実態も明らかになってきた。上海の警察官の引き出しに何故200万ドルの現金があったのか。彼は、台湾、日本、韓国その他アジア諸国のビジネスマンが占める静安区を管轄して味をしめたのだろう。
最近、天安門広場や山西省等で起きた爆発や攻撃は、大きな社会危機の前兆にすぎない。1989年に天安門広場に集まった者が欲したのは「平和的、論理的、非暴力的に」デモをする権利だった。その平和のスローガンは、無制限の暴力の論理に閉じ込められた独裁政権の前でも通用するのだろうか、と論じています。
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魏京生は、中国の民主化活動家で、それ故1979年~1997年、刑務所にいましたが、現在は米国在住です。Marie Holzmanは、フランスの現代中国の研究家で、中国の民主化・人権に係る「Solidarite Chine」の代表も務めています。
1978年の「北京の春」から、長年、中国の民主化や人権弾圧の動向を見てきた、中仏の2人が、中国の現状を憂いて書いたのが、上記論説です。経済改革のみを進めて、政治改革の進まない中国は、30年前と変わらない、と嘆いています。