2024年11月24日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年3月31日

腐敗はびこる軍も改革を
戦える軍隊に

 人民解放軍改革の主たる目的も、腐敗撲滅であるという。中国では、軍の腐敗は有名な話だ。中国メディアは、中国人民解放軍総後勤部の谷俊山元副部長(中将)が汚職容疑で失脚して2年経った2014年1月14日、同氏の実家で行われた家宅捜索の様子を報じている。同氏の汚職は、元中央軍事委員会副主席の徐才厚の失脚にもつながっているとされる巨額汚職事件だ。

 後勤部は、基地や軍人の住居の建設並びに装備品の調達等にも関わるため、汚職がはびこりやすい。中国でも、不動産はお金になるのだ。総後勤部の汚職に代表される軍の腐敗は、国防予算の非効率的使用につながっている。例えば、人民解放軍では、2000年代初めから、下士官用宿舎の不足が取り沙汰されている。それが、2013年になっても、まだ、問題として報道されているのだ。

 宿舎不足の原因は、後勤部による土地売買に係る不正だけではない。出来上がった宿舎を将校が不正利用していることを問題視する「下士官用宿舎は下士官に」という見出しの報道もある。いくら予算をつぎ込んでも、予算を執行する側に腐敗があれば、目的を達成できないということだ。

 また、常識的に考えても、汚職によって蓄財に精を出す将校が率いる軍隊が、まともに戦えるとは思えない。また、どこの軍隊でも、兵隊は自分たちの指揮官のことをよく見ているものだ。ここに、習近平主席の危機感がある。昨年発表された「中国国防白書」の中で、これまでの「軍隊建設」から「戦争準備」へと力点を移したのは、「綱紀粛正によって戦える軍隊にしろ」という意味を含むのだ。このために、軍の上に新設されたのが、先に述べた「中央軍事委国防・軍隊改革深化指導小組」である。公務員に対する成果と同様、軍人も外食をしなくなった。「危なくてできない」という。

 こうした「意識改革」は、下部の抵抗を抑える指導者の強権によって初めて実行できるというわけだ。

政治将校制度が及ぼす非効率性と悪影響

 しかし、軍運用の効率化は、意識改革だけに止まらない。もう一つ検討されているのが、政治将校制度だ。共産党の軍である中国人民解放軍にとって、末端部隊まで配置された党組織と政治将校は、党中央の意図を末端まで行き届かせる神経のようなものである。これまでの中国指導者は、軍の武力を恐れるが故に、末端まで自らの意志に従うよう監視していたとも言える。


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