しかし、政治将校制度は人的にも装備的にも時間的にも壮大な無駄遣いだ。さらに、不必要に意思決定に時間を要し、時に指揮系統を混乱させる。政治将校制度が及ぼす非効率性と悪影響は、中国指導者にもよく理解されている。
習近平主席は、末端部隊に限り、政治将校制度を廃止する方向で検討しているというのだ。
末端部隊とは言え、政治将校をなくすためには、相当の自信と覚悟が必要だろう。このためにも、習近平主席は、自らに権力を集中させる必要があるのだろう。
習近平体制が進めようとするのは一種の賢人政治である。また、自らが清廉でなければならない。ハーバード大学留学中の娘を呼び戻したのは、米国に人質を出さないという意味の他に、他の高級幹部に対する手本を示す意味もあったろう。
それでも、国内に不満は残る。全人代で空軍が元気だったのは、最近数年間、空軍の不満の原因であった予算配分に、何らかの考慮がなされたからかもしれない。中国指導部は、綱紀粛正を進める先に制度改革も見据えるが、各軍や各利益団体の不満を考慮しつつ進める「改革」の道のりははるかに遠い。
■「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る(=isMedia会員登録)
「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします。