2024年4月19日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年3月31日

 これまでも、改革を進める組織として「国家発展改革委員会」が、中国の政府である国務院に存在していた。しかし、三中全会で新たに改革推進の組織を設立したということは、改革推進の担い手を、政府から党に移したことを意味する。

制度よりも意識の改革

 今回の全人代でも習近平主席の存在が目立った。政権発足当時の多くの予想と異なり、現在の李克強首相の影は非常に薄い。習近平主席が自らへの集権化を進めることに対して、中国国内でも、毛沢東時代への回帰を想起して、警戒感を示す見方もある。しかし、一方で、これこそが中国の改革の進め方だという意見もある。では、習近平主席が進めようとする改革とはどのようなものなのだろうか。

13日に閉幕した全人代。「改革」の行方は… (写真:ロイター/アフロ)

 習近平政権が「改革」を強調しているにもかかわらず、今回の全人代でも、具体的な組織改革や制度改革は見られなかった。中国は、現段階で、大きく制度を変える意図はないのだ。現在、中国が強調している「改革」は、制度の変更によるものではなく、人々の意識改革に近いもののように見える。

 習近平体制になってから、中国の公務員は非常に忙しくなったという。これまで、中国の公務員は仕事をしないことで有名であったから、真面目に仕事をするようになったということかも知れない。彼らの多くは、自ら真面目に働こうと思った訳ではないだろう。強制されているのだ。これこそ、習近平主席が進める「改革」だと言える。これに対して、これまでも真剣に仕事に取り組んできた政府職員等は喝采を送っている。

 「反腐敗」を展開し、贅沢な食事の禁止等を含む政府機関の無駄遣い排除を進めるのは、「改革」の一部であると言える。その他にも、これまでご褒美的な意味もあった幹部の海外出張も、日数が制限される等の規制が加えられている。また、彼らに対する集団教育も復活した。

 こうした意識改革を進めるために、これまでの制度の上に新たな組織を設置したのだと言える。


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