2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年4月24日

 西太平洋で米国が戦力投射するのに必要な空母打撃群、手近な基地、軍事衛星等を攻撃する技術――沿岸の砲台、陸上航空機、誘導ミサイル駆逐艦、高速巡視艇、潜水艦から発射する長距離対艦・防空・陸上攻撃ミサイル――に大々的に投資してきた。とりわけ力を入れたのが海軍の近代化で、今や中国海軍は約190の戦闘艦を擁し、2020年には規模で米国を抜くだろう。もっとも、その時でも、米国の大型空母11隻に対し、中国が持てるのはせいぜい小型空母2隻ぐらいだろう。

 しかし、いずれにしても、中国が高度な兵器システムを取り入れるに従い、外国から先端技術を買う(時には盗む)ことのコスト面での有利性は消えていく。戦略国際問題研究所のChristopher Johnsonは、今や中国の種々のハードウェアはよくなったが、難しいのはこれらを統合して機能させるためのソフトウェアの開発である、と指摘している。

 また、中国は、西側流の統合命令系統も導入しようとしているが、しばらく実戦経験がない中国軍にとって、これは長く苦しい作業になる可能性がある。さらに、中国が「至近域」を越えて戦争遂行能力を持とうとすれば、今よりはるかに巨額の軍事費と「新たな基盤、兵器、関連システムへの大規模投資」が必要になる、と専門家は言っている。

 加えて、中国の軍事的野心は、早晩、経済の減速と急速に高齢化する社会の要求によっても足を引っ張られることになろう。勿論、だからと言って、周辺諸国は心配する必要はないということではない。中国は、相対的に弱体な指揮統制と、実戦経験がないまま新兵器の威力を誇示したくてしかたのない司令官たちを抱え、領有権問題にいらつき、彼らから見れば米国主導の中国包囲の動きに腹を立てている。Johnsonも指摘するように、不安と同居する自信過剰は恐ろしい、と言っています。

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 全人代は、中国の国防予算は昨年の予算の12.2%増加と発表した。中国経済の頭打ち、減速という話が囁かれている昨今、またか、という感がある一方、それがどういう軍事的意味を持つのだろうかと改めて考えているのが、この論説です。

 この論説も指摘しているように、インフレ率を除くと中国の軍事費は8.4%の増加であり、今までの2桁成長よりやや減速はしています。それでも、既に厖大な軍事費のさらなる増加です。


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