エコノミスト誌3月15-21日号が、ひたすら拡大する中国の国防予算に周辺諸国は不安を感じており、将来もこのままの勢いで拡大するわけではないだろうが、現在の、自信と不安感の同居している中国は危険である、と言っています。
すなわち、全人代の初日に中国は、今年度の国防予算を昨年の12.2%増の1320億ドルと発表したが、これは公式の数字で、実際はこれをはるかに上回るかもしれない。周辺諸国は、中国の国防予算のあくなき拡大は、「近海」での領有権争いで自らの意志を押し通す決意と不可分であると見ている。
他方、その前日にペンタゴンが発表した4年毎の国防計画見直し(QDR)は、米国の国防予算が今後5年は横這いか減少する可能性が高いことを示唆している。中国の国防予算は米国の3分の1だが、今の傾向が続けば、差はたちまち縮まる。勿論、日本、ベトナム、韓国も軍事費を増やしているが、これらの国を束にしても、中国はそれをはるかに超える。
もっともこの12.2%という数値は、インフレ調整すると、実質8.4%になる。しかも、防衛分野のインフレ率は、中国経済全体のそれよりさらに高いかもしれない。これまで中国の力の源泉は、低賃金の兵士を数多く抱えることだったが、これからは、技術的に熟達したプロフェッショナルな軍隊を作っていかなければならない。特に、有能な下士官の募集と訓練が優先課題であり、これはつまり、民間の熟練労働者の給与に匹敵する賃金を払うことを意味する。国際戦略研究所によれば、国防予算に占める人件費の割合は中国が3分の1、インドが45%、米国が50%だが、中国が享受してきたコスト面での有利性は崩れ始めたと言える。
同じ事はハードウェア面でも起きている可能性がある。この10年、中国は、米国にとってこの地域への介入が危険になるところまで軍の能力を引き上げることに腐心してきた。