過去30年の軍備増強、特に1996年の台湾海峡危機以来約20年間のインフレを除いた2桁成長のお蔭で、東アジアの軍事バランスは一変しました。東シナ海における、日本の海空自衛隊と中国の海空軍勢力の比較優位は大きく逆転し、台湾の自力防衛も不可能な状況に変わりました。そして、今後ますます中国側の比較優位は増大する趨勢にあります。
それがいつまで続くかという問題です。中国では、生活水準の向上により、労働コストの比較優位は徐々に失われ、少子高齢化、環境問題なども漸次顕著となってきています。
中国経済が衰退し体制の基礎が揺らぐまでには、まだ10年、20年はかかるであろう、と予測されます。とすると、軍事バランスが最も危険な状況に達するのは今から10年後ぐらいということになります。そして、今までの蓄積もあり、その時期までは軍事バランスは悪化し続けると考えねばならなりません。その間は、この論説も指摘しているように、中国と近隣諸国との摩擦が増大する不安感の中で、軍備に対する中国の自信が増大する危険な時期です。
日本の防衛費はやっとプラスに転じましたが、おそらく今後10年間はそれを続けねばならないでしょう。そして、米国の軍事費は、ここ2、3年は底でしょうが、やがてカムバックせざるを得ないと思います。そうやって、日米両国が今後の10年間を乗り切れば、その後の展望が開けるのでしょう。
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